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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」10 夏至祭直前リハーサル

夏至祭の朝が来た。天候は上々で、空の高い所に薄い雲がたなびいていた。
アレクが高台に立って、遥か西北方向のサージ・ウォールから北方の森林地帯を観察していた。
「風が弱い。昼間は暑くなるぞ。午後2時からの詠唱礼と大霊祭の儀式にはちょうどいいな」
その横でシャルは体操をしていた。
「ああ、地上はいいなぁ。香りが濃くてホッとする」
「そうだな、俺達は半年も飛び続けて来たんだ。夏至祭の休暇中は時々降りてこようぜ。故郷には帰れないが、ここで十分だ。シャル、お前はどうだい」
「俺は泳ぎたいよ。湖は入っていいんだろ」
「単独行動はするなよ」
「じゃあ、皆を誘おうぜ」
その頃、入念に仕度をしたカレナードはキリアンと連れだって、舞台脇での抽選に臨んでいた。艦長立会いで25名の女性出場者が次々にくじを引いた。くじが引かれるたびに道化によってパートナーの名が読み上げられ、どよめきと拍手が起こっていた。
「新参訓練生リンザ・レクトー嬢、お相手は情報部副長ジルー・トペンプーラ殿」
「十ヶ月訓練生ソカンリ・ジカ嬢、お相手は警備隊航空部テナン・ボルタ殿」
リンザもソカンリも代表の矜持を胸に、パートナーの前で丁寧なお辞儀をした。
ソカンリはケニッヒの相手が決まるのを見ていた。彼のパートナーは女王区画代表のベル・チャンダルだった。
最後に1本だけ赤いくじが残った。マリラのものだった。女達は誰もがそれを引いてはならないことを知っていた。
道化は大袈裟にマリラが引いたくじを掲げた。
午前中の彼の衣装はまだ大人しかった。両肩に付けた大きな5重のフリルが揺れて、腕と尻にぶら下げたポンポン玉がぶらぶら弾み、顔は常に悪戯っぽい笑みを湛えていた。
彼は微かに厭らしさを含んだ声で呼ばわった。
「女王陛下マリラ・ヴォー、お相手は新参訓練生カレナード・レブラント殿!」
マリラとカレナードは、この日、初めて心静かに相対した。女王の肩書と新参代表の肩書は有って無きが如しだった。
道化が名前を読み上げた瞬間、2人の目が合い、パートナーとして最後まで踊り切る意志を相手の目の中に認めた。
マリラは他の女達と同じように自分のパートナーの前に出た。そして腰を下げて挨拶した。カレナードはマリラを前にしても落ち着いていた。エーリフの特訓とキリアンの友情が彼を変えたのだった。カレナードが挨拶を返すと、マリラは言った。
「よろしく頼む、レブラント殿」
カレナードは応じた。
「第15曲まで、お相手を務めさせていただきます。御手をどうぞ」
2人は第1曲の開始のポーズになった。マリラの左手がカレナードの右手に乗り、肌の暖かさが交わった。心地よかった。2人はただ踊ることに全力を尽くすだけの関係をすんなり受け入れた。
それは喜びだった。
艦長は軍楽団に合図を送り、最後のリハーサル、ゲネプロが始まった。
本番どおりの衣装を着け、立ち位置を確認し、道化がアナウンスを受け持ち、四方のライトが点いた。観客席代わりの斜面に艦長がマイクを持って立ち、遠慮なく最後の調整を始めた。
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