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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」9 ソカンリのアーモンド

カレナードは怒っている少女に話しかけた。
「1回目のリハーサルで一緒に5曲を踊ったことを覚えてるかい。とても上手いと思ったんだ。ステップが軽くて素早くて、飛んでいるようだった」
彼女はダンスの話になると細い眉が輝いて、リンザ・レクトーを思わせた。
「ええ、覚えいるわ、紋章人さん。あなたも合わせるのが上手いわ。リードが強引じゃないのよね」
彼女はカレナードの左手を取って、残念そうに言った。
「あーあ、あなたが女王さまのご予約済みでなけりゃいいのに」
あけすけな言葉に男達は目を丸くした。
ゴンドラはフル稼働していて、すぐに乗る順番が来たが、2人だけ先に下ろすと警備兵が指示した。キリアンが先に行けとカレナードを押した。ソカンリとカレナードは荷物を抱えて、ゴンドラに乗った。
下降する間、風を感じた。
「カレナード、後夜祭はどうするの」
「新参生は乗組員では下っ端だから、ずっと撤収作業の手伝いだ」
「夏至祭の休暇中会えるかしら。デートしましょうよ」
「僕とかい」
「お願い、はぐらかさないで」
ソカンリはアーモンド形の目を急に見開いてカレナードを見た。無邪気なのか、女の媚なのか彼には分からなかったが、魅惑的な目だと思った。
カレナードが返事をする前にゴンドラは地上に届いた。2人は丘陵地の宿泊テントに向かって登って行った。周りはそれぞれの用意と役目に忙しいヴィザーツが行き交っていた。
別れる前にソカンリは言った。
「返事は明日ゲネプロの時でいいわ」
「いや、返事は今する。デートしよう、ソカンリ」
彼女は優しく微笑んだ。手を振ると女子テントの方へ小走りに消えて行った。その姿が見えなくなるまで見送った。
「女王さまのご予約済みか…。それはそれ、これはこれ、さ。不思議な目だな、ソカンリは…」
すぐにキリアンが追い付いてきた。彼はデートの件を聞き、なぜか大笑いした。
「彼女さ、真っ直ぐの黒髪にあの目が大人しそうに見えるのに、な。それで、デートはどこでやるんだ」
「湖の方までピクニックに行こうと思うんだ」
「そっちは皆が遊びに行くぞ。すぐに噂になる」
「いいさ、紋章人だってデートくらいするさ」
「そうか、お前が無理してないなら、それでいいんだ」
「キリアン、そんなに僕が心配なのか」
「まぁ、1ヶ月以上も付きっきりで練習相手を務めたんだ。明日がゲネプロと本番だぞ。浮かれて怪我でもされたらたまらん」
「この小姑」
「うるさい、スカポンタン」
「何だって。心配性め」
「ヘン、女たらし」
2人は言い合いながらテントに入った。ミシコが「遅いッ!」と睨んだ。その夜の設営作業の途中で出た夕食はケニッヒが言ったとおりの赤カブ煮込みで、馬肉が入っていた。
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