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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」5 祭りに臨んで(ワイズ・フールとマイヨール)

ピードが去った後、隊長はガーランドの周囲15kmに張り巡らせたセンサーに定時のコードを走らせたのち、飛行艇ベナ・ワンに連絡した。
「南西B1とC5装置を調整してくれ。コードの反応が弱い。頼んだぞ」
通信機の向こうから、「了解」の声がした。
「ピードが自分の居場所を警備隊だけにするのはいかん。ヤツはいよいよガーランドに引きこもってしまう。なんとかしたいものだ」
道化は自分専用のテントを持っていた。そのテントはほとんど留守だが、派手で毒々しい模様は何人も勝手に入ることをためらわせた。それをわざと情報部と管制部の合同テントの横に張ったのは、トペンプーラへのちょっとした嫌がらせだった。テントの中は道化衣装と祭りの悪戯に使う小道具ばかりだった。
「いいですねぇ、小生は夏至祭の引き立て役!清々しい空気、マリラさまの滔々たる祈りの声、大地を踏みしめる皆さまの熱狂。やがて夜のとばりに紛れて小生の悪さが炸裂!うっふっふ、恋人さん達の邪魔をしてしてしまくっても、なにしろ無礼講ですからね。悪さのやり放題ッ!なんつうシアワセ、にゃほほほほっ!」
狭いテントの中を飛び跳ねていると、入り口の幕が開いていた。
「ほどほどにしておきなさいね、ワイズ・フール」
そこに立っていたのはマイヨール女史だった。
「見ましたねぇぇ、生きて返しませんよ、マイヨール・ポナ先生」
「あら、怖い怖い」
彼女は軽くおどけてみせた。
「あなたの嬉しそうな笑い声、外に丸聞こえよ」
「かまいませんとも。皆さま、ご存知でいらっしゃる。この道化がいかに貴く大事な一瞬をぶち壊しに来るか。でもね、隙を見せる方がいけないのです。そうは思いませんか、歴史学者さん。浮かれていると足元をすくいに来るヤツが必ず来るんです。祭りだからって油断大敵。そうでしょ」
「そうね。私も油断はしてないわ。ワイングラスに唐辛子を盛られるのはまっぴらよ」
「チッ、罪のない悪戯でございますのに見破るとはあんまりな」
「胡椒はもったいないわよ、カローニャ領国の島でしか取れないんだから」
「お、奥の手は他にもありますから、どうぞお楽しみに。先生」
マイヨールは笑った。
「今年はどんな衣装なのか、楽しみにしているわ」
道化のテントを後にしながら、マイヨールはつぶやいた。
「釘の刺しかげんはこんなものかしら。今年のエンゾ教官は訓練生をいじめ過ぎよ」
施療棟で療養中のヴィザーツの中にリリィ・ティンがいた。
彼女は急速に回復していた。まだ仕事に復帰できないものの、夏至祭を前に体力を取り戻そうとウマルと林を散歩していた。
ウマルはリリィの歩調に合わせて歩いた。
「原因はレンダウィルスだ。カレナードはこのウィルスのキャリアだな。
軽い風邪の症状ですむはずだが、ドクトル・リリィには大当たりだったわけだ」
リリィは大当たりと言われて機嫌が悪かったが、命の恩人に対していつまでも拗ねていられなかった。
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