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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」4 祭りに臨んで(ヤッカとピード)

乙女達は全員ハッとした。肝心の夏至祭に薄汚れた肌とべとついた髪でいるのはまことにまずい。
ララとルルが「湯船のセットを用意するから、みんな祭りの衣装を片付けて」と言った。Y班のメンバーが注意深く衣装をしまう中で、半裸のミンシャは行程表をめくった。全員が風呂を終えたら、仕事の最終確認をしようと思った。
「ダンスのお相手役がマヤちゃんとルルと私。持ち場は第1ブルーテント。お給仕がララとオーレリで第3レッドテント。ララがグラスを割らなきゃいいンだけど。アラートは蕎麦クレープの受け持ちで第4レッドテント、ね。確か男子V班のシャルが一緒だわ。あいつクレープ焼けるのかしら」
目の前をオーレリが髪を振り乱して横切った。
「オーレリったら、いざとなると怖いのよね…。
舞台の設営が一番先に終わって、当日午前中に踊り比べの最終リハーサルでしょ。私達はその頃には仕事場のテントに移動しなくちゃ。マリラさまが祭壇で詠唱さなる儀式は全員揃って午後2時スタートなンだから、身繕いできる時間は少ないわ。女子訓練生の宿泊テントを張る時に、いい場所を下見しておくべきね」
ララが叫んだ。
「班長ミンシャー、お風呂使ってー!」
「ララ、ありがとね。あとでみンなに注意事項を伝えるからお肌の手入れでもして部屋にいてちょうだい。女子の宿泊テントはきっと場所取りの争奪戦になるわ。荷物はトランク1個にまとめるのよ。突撃隊長はオーレリ。頼むわよ」
「あらあ、私に務まるかしらぁ」
オーレリはあいかわらず髪が乱れたまま、振り返った。口ぶりとは裏腹にやる気たっぷりだった。
Y班の真上の部屋ではまだ騒ぎが続いていた。ミンシャはちらと見上げた。
「リンザ・レクトーの班はたいへンよねぇ。彼女の舞台補佐なンて誰がやるのかしら」
Y班班長は最後の下着を取って清拭コードを腰の周りに使った。それから湯船にゆっくり沈んだ。
ピード・パスリは今年もガーランドに居残るつもりだった。ヤッカは彼に言った。
「たまには楽しんで来い。お前の分くらい私がカバー出来るぞ。これでも警備隊の隊長だからな」
「冗談はやめてください。俺はマリラさまの詠唱が終わり次第、ここに戻ります」
「踊り比べも見るといい。マリラさまが踊られるのを見たことないだろう。この機を逃したら次は我々がいなくなった後かもしれんぞ」
ピードはまだ下船をためらっていた。
「隊長、留守のガーランドを預かるのが警備隊の役目です。俺はここにいます」
ヤッカは父親の顔になった。
「お前の事情は分かっているつもりだ。だが、私はあえて勧める。若者は祭りに参加してこい。そして見てきなさい。お前と同種の苦しみを抱えたあの新参訓練生が女王の相手を務めるのを」
ヤッカはピードに1枚の招待券を渡した。
「久しぶりに艦長に挨拶してくるといい。酒は強いだろう」
「俺が艦長の酒蔵で飲むのは、よくありません。子供が行く所ではないですよ」
「お前は子供ではない。ピード・パスリ、隊長の命令だ。夏至祭の夜が明ける前にガーランドで見かけたら、逮捕するぞ」
少年の姿の警備兵は折れた。
「分かりました。六の月、25日の日の出と共にガーランドに戻ります」
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