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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

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第6章「夏至祭」3 ガーランド高揚・その3

ハーリとヤルヴィは軍楽団で揃いの上着を着るため、最後の針仕事をしていた。
「僕は裁縫の腕も上がったな。ほら、もう出来た」
「ハーリは器用だね、サージ・ウォールの模型だって凄いじゃないか。甲板材料部と航空部のエライ人が熱心に見ていたよ」
ハーリはそれには応じず、ヤルヴィが直している袖の片方を取って、待ち針を打った。
彼はまだ亡きマルゴ・アングレーを思い出すのか、たまに無口になる時があった。ヤルヴィはわざと祭りの話題を持ち出した。
「明日は最後のリハーサルだね。また小さな変更があるかな」
「きっとあるね。舞台は生ものさ。踊り手の全体的な力量に合わせて、艦長がマイク片手に指示出しまくりだもの。舞台監督だよ。でも、おもしろいじゃん、リハーサルやるたびにドラマチックになってきたよ」
ヤルヴィは聞きかえした。
「ドラマチック?」
「うん、3回目のリハーサルなんてさ、みんな第1曲からすごく音に乗ってて良かったよ」
「それにしても女王とカレナードはパートナーって決まっているのに、なぜリハーサルは一緒に踊らないのかな」
「明日は他の組もパートナーが決まるんだ。そしたら女王とカレナードも一緒に踊るさ。気遣いってヤツだろ」
ヤルヴィは裁縫の手を止めて、身を乗り出した。
「ねえねえ、ハーリ。マリラさまって意外に『お母さん』って体してないかい」
「はぁッ。ヤルヴィ、お前はどこに注目して女王さまを見ているんだ」
「そんなに驚かないでよ、ハーリ。僕だって驚いたんだ。マリラさまがあんなに体の線がくっきり出るようなお召し物でリハーサルに参加なさるなんて思わなかったよ」
ハーリも思い出して、少し赤くなっていた。
「確かに1回目はびっくりしたさ。でもリハーサルが始まったらそれどころじゃなかったし、あのお召し物はとても動きやすそうだったし…。ダンスは凄く上手かったし…。それでどこが『お母さん』なのさ」
「胸が大きいのと、腰幅が広いのと、ちょっと寸胴なのと」
「…ヤルヴィ、お前、年齢詐称してないか。本当に9歳の言うことか」
「言わなかったっけ、僕はもう10歳だよ」
ハーリはまじまじとヤルヴィを見た。さらりと言った。
「それはマザコンのなせる業だ」
今度はヤルヴィが「はぁッ!」と返した。
「違うね、ハーリ。僕は冷静に観察してみただけさ」
「そうか、そうか」
ハーリは年上の優しさでヤルヴィをマザコン呼ばわりするのをやめたが、母が恋しいのだろうと思った。
女子棟の方は大騒ぎだった。
「嫌だわ、飾り帯の刺繍が足りない」
「ちょっと。私の髪飾りを勝手に持っていかないでよ」
「祭礼用のケープが行方不明よ」
「ねえ、給仕テントの仕事はエプロンあった方がいいかしら」
「タイツに穴が開いてるわ、誰か予備を持ってない」
「それくらい自分で繕いなさいよッ!」
「口紅!口紅!」
女子の班長達は、この分では祭りが始まる前に疲れ果ててしまいそうなので、軽く脅すことにした。
ミンシャはY班の部屋の中央に立って、ゆっくり服を脱いだ。
「あンたたち、お風呂に入って綺麗にしておかないとまずいンじゃないかしら。エアシャワーは昨日から止まってるし、設営に入ると湯船を使う暇はないわよン」
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