挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第6章「夏至祭」

187/388

第6章「夏至祭」1 ガーランド高揚・その1

夏至祭までの3週間は早々と過ぎ、ガーランドは目指す北の台地を目前にした。
ミシコ・カレントとナサール・エスツェットは臨時班長会を終えて展望回廊をぶらぶらしていた。夏至祭の聖域である湖を眺めながらミシコはつぶやいた。
「あっという間だったなぁ…」
ナサールがミシコの横で夏至祭の行程表をめくりながら言った。
「艦長のシゴキによく耐えた俺達。エライ!」
ミシコはそのことじゃないと反論した。
「僕が言ってるのはな、ナサール、強化訓練の方さ。もっと管制部に居たかったよ。講義よりおもしろいと思わないか」
「お前もよく言うよ。新参のくせにこれも習ってなかったのかって散々注意されていたのはどこの誰だい」
「そこがいいのさ。ところで、地上に降りても大丈夫なのか。玄街ヴィザーツの待ち伏せは嫌だぜ」
ミシコはあまり豊かではなさそうな草原地帯に目を凝らした。北上を続けたミセンキッタ西部よりも風は冷たく乾き、荒涼としていた。
ナサールは言った。
「俺の故郷にもここと似た所があるのさ。痩せた土地、冷涼な気候、夏の放牧が精いっぱい。家畜の数が多いと3日で食っちまって移動さ。村の一つも出来やしない。見てみろ、この起伏の無さ、見晴らしの良さ。玄街が隠れて何かしようとしたら、穴でも掘らなきゃ。大土木工事が必要だよ」
「確かにそんな形跡はなさそうだ」
展望回廊を歩く2人の前をトール・スピリッツと飛行艇の編隊が飛んだ。ヤッカ隊長機が先頭を行き、偵察のための低空飛行を始めた。
「念のための安全確認だな」
ナサールはもう一度行程表をめくった。
「今夜からは忙しいぞ。各班で行程の確認よろしくな。十ヶ月訓練生は一生に一度のガーランドでの夏至祭だ。裏方は俺達新参訓練生で務める。やり抜こうぜ」
「ああ、俺達の無礼講は来年だ。今年は踊り比べを間近で見られるだけでもめっけものだ。カレナードは良くがんばったさ」
「彼の舞台補佐はキリアンでいいのか。なんなら俺が務めてもいいんだぞ」
「お祭り男。お前は新参全体を引っ張らなきゃ。舞台袖でカレナードの面倒見るのはキリアンが適任だ。彼らは、航空部に配属された新参の中で最強のコンビだから」
「艦長が踊り比べの審査団長だってさ。女王とカレナードの優勝出来レースをどう采配するか見ものだ」
「ナサール、彼は出来レースにはしないさ。やっぱり観客は真剣勝負が見たいものさ」
「そうかな。女王崇拝者が黙ってないぞ」
低空飛行をしていた飛行艇部隊が地上に展開して、警備隊の探索が始まった。夏至祭の設営はこれから丸2日をかけるのだ。
トペンプーラは甲板材料部に出向いていた。夏至祭のために甲板材料部の半分は地上に下ろす資材の準備に回っていた。ヒロ・マギアのチームも普段の仕事を中断していた。
トペンプーラはマギアを見つけると、歩きながら話した。
「例のモノの解析は進んでマスか」
「ぜーんぜんダーメ」
マギアは短く刈り込んだ頭を掻いた。珍しい竹を使ったメガネのつるをかけ直し、口をへの字に歪ませた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ