挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

181/388

第5章「夏至祭の前」27 ダンス・ダンス・ダンス

カレナードは返す言葉がなかった。
「はぁ…」
「あなた、本当に情けないわよ。お可哀そうな女王さま、こんな鈍感野郎をガーランドに拾い上げられるとは」
カレナードはますます分からなくなっていたが、これ以上リンザにくさされてはたまらなかった。
「リンザ・レクトー。踊り終わったら、僕がただの鈍感野郎ではないと認めて欲しいな」
「良くってよ。満足させて頂戴ね。エーリフよりもね」
予想通り彼女は手強かった。
艦長は15曲の中から、3と4と6と11と12と15の6曲を選んだ。
ミセンキッタ中央部の古謡である第3曲は単純なステップの繰り返しだったが、リンザの間の取り方は柔らかく、チャーミングだった。
続く第4曲はミルタ連合領国の山岳地方に広く伝わる舞曲で、小さく跳ねては大きな跳躍が続く。
カレナードは彼女の斜め後ろについて、その癖を見て取った。リンザの腕が空間を大きく包み、指の先まで神経を張り巡らせているのが分かった。上半身の使い方がとても上手かった。
先にある第11曲はパートナー同士のシンクロを厳しく要求する踊りだった。そのために彼はリンザと息を合わせるために、彼女の動きを探っていた。
第6曲はしっかりと腕を組み、大きな移動とターン、さらにリズムに合わせてポーズを取る難しい踊りだった。あちこちで「足を踏んだ」「踏まれた」「ぶつけた」もんどり打って「倒れた」カップルが続出していた。その中を、リンザとカレナードは悠々と踊り続けた。
彼女の目がきらりと光った。
「やるじゃない。カレナード」
「どうも」
「次の踏み出しを大きく取ってみて」
「そっちが難しくなるけど」
「それくらい出来るわ」
カレナードの踏み出した右脚が、リンザの前後に大きく開いた脚の間にしっかり入り、彼女は柔らかく胸を反らせた。
2人の腰は低い位置にあったが、体幹は上がったままで、そのままゆっくりターンした。
「いいわ。次もこれで行くわよ」
普段キリアンを相手に練習しているカレナードは十分にリンザを支えたが、タイミングがかなり違っていた。キリアンの踊りがまさにスタンダードで正統派なら、
リンザはそのスタイルを破りかねないエネルギーに満ちているのだ。
カレナードはそのどちらにも対応していた。
周囲から拍手が起こった。
「不思議だ、どっちも気持ちいい」
「何のことよ」
リンザの問いには答えないまま、第11曲の対策を話し合った。
「基本的に前にいる方に合わしたらどうだろう」
「じゃ、たいがい私に合わせることになるわよ」
「それはいいんだ。それと、視線の向く方も合わせたい。原則どこを見ているんだい」
「そうね、指先のもっと先の空間の一点よ」
「どれくらい先を見ているの」
「肘から指先までの長さはあるわ。あなたの後ろ姿に合わせるところは、ちゃんと踊ってよ」
「そこのパートは結構跳ぶんだ。付いて来いよ」
「任せてちょうだい」
リンザは不敵の輝きを放っていた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ