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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」15 先に禁忌に触れた人

自動車に乗り込み、フロリヤは小声で話を切り出した。
「あなた、生誕呪を聞いたことはあって。」
「いえ、お産に立ち会ったことがないので。」
「そうよね。だからなの、生誕呪を聞いて欲しいの。」
「なぜです、フロリヤさんはもう何年も聞いているでしょう。」
「私、生誕呪を唱えようと思えば唱えられるのよ。」
カレナードは息を飲んだ。これは禁忌破りの類ではないか。
運転手席とはガラスの仕切りがあるとはいえ、今の話を聞かれなかったか、彼は周りを見渡した。
「大丈夫よ、自分の奥の部屋で試しているから誰も知らないわ。」
「そういう問題じゃありません。」
「ヴィザーツの生誕呪と私のを聞き比べて欲しいの。」
「そんなことしてどうするんですか。」
「ちょっとした探究心よ。ヴィザーツの呪文には何か法則を感じるの。魔術というより数学的科学的何かをね。」
「数学的で科学的法則…。」
「ヴィザーツは生誕呪を唱える前に赤ちゃんの身丈と身幅を指で示すのよ。あれは絶対に意味があるわ。あなたも見れば分かるわ。」
「それは興味深い話ですが、お嬢さんは危険な領域に足を突っ込んでます。生誕呪のことは忘れた方がいいですよ。」
フロリヤはかまわず続けた。
「あなたなら私の見落としてる所に気がつくはずよ。実際にあの音を聞いてちょうだい。あなたとはおもしろい話がもっとできるわ。これは私達の秘密にしておきましょう。」
「秘密は共有なんて出来ません。僕がこれをネタにあなたを困らせるとは考えないのですか。」
「本気でそれをやる人はそんなこと言わないわ、カレナード。」
「フロリヤさんは僕の秘密を知ってて、それを有効に使ってるのでしょう。」
カレナードは探りをいれてみた。
「そうねぇ、私は秘密を握ってるかもしれないし、そうでないかも。」
フロリヤと水面下の戦いをしても無駄のように思われた。
「僕はシェナンディ氏に出資額をお返し出来たら、一度オルシニバレを出たいのです。」
彼にとって大きな秘密を打ち明けたつもりだったが、返事はあっけなかった。
「その時は私の飛行機で送ってもいいわよ。マルバラの領界までなら飛べる自信あるから。」
「シェナンディ氏が許してくださると思いますか。」
「出資額を返せば、あなたは一人前よ。後見人が許すも何もないわ。どうしたの、カレナード。」
「いえ、なんでもありません。つまらない考えに捕らわれていただけです。」
「そんな日もあるわ。でも、しゃんとして生誕呪を聞き逃さないでね。」
今日は試練の日だ。
カレナードは服の下のコルセットをせめてもう少し緩めたかった。
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