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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」25 リンザ、ラム肉を喰らいつつ

カレナードはトペンプーラと一緒に、ラムを焼く大きなコンロの前にいた。トペンプーラは「手際がいいですネ」と言った。
炭火の上の子羊肉はあらかじめハーブと一緒に味がしみ込ませてあった。カレナードは良い加減に焼けたラムに焼き玉ねぎを添えて皿に盛っていった。
「オルシニバレの行政府は出資寮の運営費を賄うために、寮生の仕事ぶりを披露する機会を設けて寄付金を募ったり、将来の雇用主を確保したり、工夫しています。寮生は、パーティの給仕やダンスのお相手から裏方の雑用まで大概のことは仕込まれました。どんな場所に出しても大丈夫なように。
それが役立っているわけです」
「ああ、なるほどネ。でも君のダンスの才能は、持って生まれたものですヨ。好きこそものの上手なれ、と言うでしょ。飲込みは早いし、艦長から見て盗むのも早いハズです。朝練でワタクシの動きをよく見てるでしょう」
「トペンプーラさんは強敵です」
「うふふふふふ、ワタクシは誰と組もうと14曲までは残りますよ。アナタはその先に行きなさいネ。六の月に入れば、艦長のスパルタレッスンが始まります。今日くらいは遊ぶのです。楽しめばいいのですヨ」
瑞々しい女の声が呼びかけた。
「呑気なものね、紋章人」
リンザ・レクトーだった。カレナードは一皿取って、彼女に差し出した。
「どうぞ、美味しいよ」
「ありがと。さっきの基礎レッスンだけど、あなた、いい動きしてたわ。エーリフが毎晩仕込んでいるだけあるわね」
リンザは艦長のファーストネームを使った。そこには女のニュアンスが纏わりついていた。
「私も彼のレッスンを受けているの。すごくいいわ。ダンス教授の中でダントツよ」
彼女は焼いたラムを一切れ口に入れた。
「んん、美味しいわ」
赤い舌で唇を舐めながら、以前とは違う視線を向けた。
「ねえ、あとで私と踊ってみない。あなたがどれくらい腕を上げたか、知りたいわ」
「女同士では踊らないと、君は宣言したはずだけど」
「あら、そんなことないわよ。夏至祭で新参代表同士が踊ることはないんだから、チャンスよ。第11曲以降で私をうまく持ち上げたら、ライバルと認めてあげる。ここまで言われて引き下がるわけないわよね。どう、受けるわよね」
リンザはかつてカレナードを怒らせたことなど、露ほども感じてなさそうだった。それどころか自信たっぷりに挑戦状を叩きつけに来たのだった。カレナードはトペンプーラと顔を見合わせた。リンザは腰に手を当てて、顎を上げた。
「何よ!返事もしないで、男同士で相談しなくちゃいけないほど難しいこと言ったかしら、私」
彼女は高飛車ながら真剣だった。カレナードは同じ高飛車な女でも、リリィに比べたらリンザはダンスに純粋で、可愛い方ではないかと思った。彼が承諾すると、リンザはもう一皿ラムを山盛りにして、エーリフのところへ駆けていった。
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