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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」24 艦長ポケットマネー

その日のレッスンは散々だった。カレナードの背中はまったく伸びず、ステップはのらりくらりした。
エーリフがわざと何も言わないのに気付いていたキリアンは、レッスンのあとでもう一度カレナードを叱った。
「お前は皆の前で宣言したんだ。気合を入れ直せ。それが出来なくて夏至祭の舞台に上がるつもりか。明日もこんなのなら、俺はお前が情けない」
翌朝、カレナードは淡々と朝練をこなしていた。
トペンプーラが「皆さん、よくなってきましたネ。明日はヴァージョンアップですヨ」と褒めた。
キリアンはとりあえずホッとした。カレナードが気力を取り戻すには、トペンプーラの飄々とした励ましが効くようだった。
五の月の強化訓練は残すところ数日になっていた。
エーリフは散々鞭打った新参達に、月末の3連休を利用した飴を用意した。それは最上層の左舷にある細長いテラス式庭園でのバーベキューパーティだった。さっそく喜んだのはナサールだった。
「艦長殿、たんまり焼いていいのですね!」
「もちろんだとも。私からの奢りだ、ポークとラムを山のように焼きたまえ」
「僕達だけいただくのは、何やら気が引けますが」
「後半の強化訓練のために滋養をつけたい者は誘っていいぞ。ただし30分だけ基礎レッスンに参加することが条件だ」
その結果、パーティ参加者は40人を超えた。ナサールはちょっと宣伝しすぎたかと冷や汗をかいたが、艦長はむしろ張り切っていた。
「エスツェット君、管制室の連中を全員呼ぶよりは出費が少ない。彼らは酒豪揃いだからな。私の秘蔵まで出す羽目になる」
「艦長殿、もしやパーティは艦長の私費でありますか」
「当り前だろう。私が妻帯しない理由の一つはな、自由に大盤振舞いをするための財源確保なのだ。妻に娘でもいてみろ、彼女達を磨くためにどれだけ費やすか想像できるかね」
ナサールは笑い出しそうになるのをこらえて言った。
「艦長殿は女性を美しくするためなら、出費を惜しまないタイプなのですね」
「そうかもしれん。みっともない妻は、私には耐えられない」
「おめがねにかなう女性が現れたらいかがなさいますか」
「マリラさま以上の女性がいると思うかね、ナサール君」
バーベキューパーティの日は朝から快晴だった。
物理バリアーのおかげで、天蓋のない左舷上層テラスは強風もなく穏やかだった。庭園というには堅苦しさのない芝生の平地が広がっていた。眺めは最高だった。西方に遠く、ロシェ大山嶺の雄大な姿があり、その麓まで草色と小麦色の草原が広がっていた。いくつかの河が東方へうねって流れ、ミセンキッタ大河を目指していた。
パーティには軍楽団から5人、教官が2人、艦長の僚友が4人来ていた。その中に参謀室長ヨデラハンとマイヨール女史もいた。
午前11時に新参訓練生が刈り込んだ草の上で基礎レッスンを終えたあとは、さっそくバーベキューが始まった。
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