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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」22 復讐の階段

艦長はさらに注文をつけた。
「相手の息遣いを、体温を、視線を、動きを、香りを、そして音楽を、さらに周囲を、感覚を解放すると同時に集中して感じ取るのだ。君はキリアンや私と踊っているとき、隣のナサールやミシコを見る余裕があるかな」
カレナードは汗を拭った。
「そこまでは…」
「なぁに、まだ5週間あるのだ。トペンプーラとの朝練も効いてきた。このチームはどんどん変化していくぞ。心を開いて感じてみたまえ」
エーリフは誘導するのに長けていた。カレナードは自然と相手の呼吸を意識するようになった。
だが、心の底にはマリラへのわだかまりと怒りがあるのだ。実際にマリラと踊る前に彼はそれを心から追い出さねばならない。その糸口がどこにあるのか分からなかった。
五の月の第4週の始め、彼はリリィと再び対決に及んだ。
今回も午後5時に診察室に入った。その日、施療棟には多くのヴィザーツが残っていた。
リリィは診察中は完全に医師ではあったが、内心では先週の続きを再開したがっていた。カレナードはそれを承知していたので、絡みつく彼女の視線を軽くいなしていた。
あからさまな闘志は不要だった。彼はそっと口火を切り、内診のカーテンの向こう側のリリィに話しかけた。
「ドクトル・リリィ。医療行為と個人的嗜好は分けていただけませんか。診察が終わってからにしましょう」
「正論だわよねぇ」
リリィは揶揄するように言った。カレナードはその調子に合わせた。
「正論というより、原則ですよ。ミス・リリィ」
「わざと誤診なんてのは医療ヴィザーツの原則違反だし、やりたくもないわ。でも、正論や原則だけで世の中が動くわけじゃなし。どう思う」
「僕はあなたの医師以外の部分に失望したくないだけです」
「あら、個人的に興味があるのね。それでどうするの。ああ、分かったわ、私の愛人になりたいのね」
「どうしてそっちの方に話が行くんですか。僕は残酷な人に近づきたくありませんから、それは見当違いですよ」
カーテンの向こう側でリリィが少しむっとしたようだった。
彼女は検査器具をゆっくり引き抜いた。
「品行方正な態度のドクトル・リリィを期待しないで。あいかわらず、お前は甘いわ。でも、お望みとあらば大人の付き合いをしてあげてもいいのよ」
カレナードは起き上がってカーテンを開けた。女医と目が合った。カレナードは検査用ローブの前を合わせて、脚の間を隠した。
「大人の付き合いじゃなくて、個人的な付き合いで僕の体をしたいようにするだけでしょう」
「よく分かってるじゃないの。大人しくいていれば、優しくしてあげてもいいわ」
カレナードはリリィの弱点に触れたような気がした。
彼は勝負に出た。今度は彼が残酷になる番だった。
マハが「この2人はこんな関係だったのか」と誤解したまま、カルテを差し出した。リリィはカルテに一筆書き込んでいたが、カレナードは彼女にすり寄った。
「ミス・リリィ」
彼はリリィの手からカルテを奪いマハに手渡した。マハは信じられない光景を見た。カレナードが女医の手を取って自らの胸に添わせたまま、すばやく接吻した。
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