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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」17 この1杯のために生きてるッ!

カレナードが来ると艦長は挨拶もそこそこに彼を抱き寄せた。
「なるほど。君の背丈は私の頭半分低いのだな。私の背丈は女王と同じだ。練習台にはちょうどいいぞ」
艦長の胸板は厚く、巨体は壁のようだった。そこから放たれるエネルギーも女王のそれと同じに思えた。カレナードは気圧されないよう胸を張った。艦長自らが出向いてきた自体、女王のパートナーを務めるのは生半可ではないと告げていた。
「早速だが、第4曲を踊ってみよう。リードは君に任せる。伴奏者は来ているかね」
ヤルヴィとハーリはすでに楽譜なしで、フィドルを構えていた。第1曲から第5曲はいずれもアナザーアメリカの古謡だが、4曲目はテンポが速く哀愁を帯びながらも複雑なステップが組み込まれていた。様子を見ていたキリアンは艦長がカレナードの腕前を計るのだと思った。
伴奏が始まった。カレナードは艦長の巨体に後れを取らないよう、体を大きく使ったが速いテンポに追いつかず、艦長のすねを蹴った。ついで、ジャンプとターンが続く後半では艦長の足を踏んだ。
「ウラアアアアァァッッ!」
エーリフは雄叫びと共に少年を床に転がした。
「大した作法だ、カレナード・レブラント。君は乙女の足を踏むのかね」
「ご無礼いたしました、艦長」
カレナードは大急ぎで立ち上がった。艦長は彼の腹と背を両手で挟むようにした。
「姿勢を直さねばならん。女王の体格に合わせてスピードが落ちるのは、体幹に力が足りんからだ。背筋に比べると腹筋がやや弱い。それからここだ」
艦長は腰骨のすぐ内側をぐっと押した。
「ここの深い所にある筋を意識できるかね。太腿の後ろ側から尻を引き締めて、そうそう、腹筋も自然と締まるだろう。そのまま上体を持ち上げるのだ。肩の力は抜きたまえ。鏡がない分、体に覚えさせたまえ。これが基本の姿勢だ」
艦長は彼の肩甲骨の間にある筋をなぞった。
「ここも伸ばすのだ。そうそう、常に意識して歩きたまえ。姿勢を崩してもすぐに直せるように」
エーリフのレッスンは情熱的で激しかった。彼は練習にミシコとキリアンも半ば強制的に参加させ、ダンスに必要な基本動作のメニューを教え込んだ。
「いいか、キリアンはカレナードに付き合って一緒にやるんだ。いつものランニングと体操の代わりに毎朝一時間かけろ。ミシコは監督だ。2人がさぼるようなら、蹴りを入れてやれ。もっともこれが出来ないようでは優勝など夢のまた夢だがね」
食堂の外の廊下には好奇心旺盛なギャラリーが集まってきた。90分のレッスンの後、彼らはカレナードとキリアンが息もたえだえに床に転がるのを目撃した。ミシコは2人を起こしてストレッチさせ、ナサールはマネージャーと化して、艦長にタオルを差し出した。艦長は余裕でビールを流し込んでいだ。
「若い男はいいねぇ。鉄は熱いうちに打て、だ。ナサール君」
「仰るとおりです、艦長殿」
「君も毎朝彼らと一緒に基本練習をやりたまえ。これも世話役の仕事だよ」
「…は…はいっ!了解であります、艦長殿ッ!」
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