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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」16 策を講じる

そのころ、女王執務室ではジーナが同じ問いを繰り返していた。
「本当に踊り比べにご出場をなさいますの」
マリラは女官長に出場者リストを渡した。
「雛壇で座っているばかりが女王の役目でもあるまい。たまには皆を楽しませるのも大事なことだ。ジーナ、そなたが生まれる前、私は度々踊っていたのだよ。知らなかったろう」
「おっしゃるとおりです。艦長と夏至祭の司長に連絡して、出場者をもう1人増やしている最中です」
女官長はリストに目を走らせながら訊いた。
「で…マリラさまのお相手に変更はないのですね」
「女王のパートナーは常に若い男と決まっている。新参訓練生以外に誰がいるのか」
ジーナは真剣に問いかけた。
「あの者はいけません。紋章人を前にするとお心が苦しくはございませんか。まして一緒に踊ることとなれば」
「女官長は私があれをヴィザーツの前で痛めつけはしないか、心配なのだな。大丈夫だ。夏至祭の間、私はずっと女王の務めに忙しい。あれにかまっている暇はない」
ジーナは心の中でため息をついた。マリラの決心は変えられそうになかった。
知らせを聞いたエーリフは少々頭を抱えていた。
「踊り比べの補充人選などはたやすいことだ。だが、女王があの新参訓練生を名指ししたとは、どうしたものか。彼が現れてから、マリラさまのお気持ちは多少乱れておいでのようだ。少々は構わない、女王とて人であらせるのだからな。しかし、これ以上はどうしたものか」
彼は艦長室の窓から女王区画を眺めた。
「ガーランドは小さく特殊な世界だ。地上のヴィザーツ屋敷とはわけが違う。マリラさまの影響力は無視できるものではないのだ。どうしたものか。
ともかくあの訓練生が立派にお相手を務められるよう、鍛え上げるのが私の役目でしょうな」
彼は心に閃くものがあった。
「いい機会だ。新参どもに飴と鞭をくれてやろう。そして、補充の男はあいつにしよう。今年の夏至祭は白熱するぞ」
彼は情報部への艦内電話を使い、数時間後には新参訓練生棟の食堂に現れた。エーリフはわざと勿体ぶって扉に寄りかかり、ポーズを取った。
「ダンス教師は要らんかね」
練習準備していたナサールは千載一遇のチャンスに向かって走って行った。
「艦長殿、ダメ元などとは申しません。我々新参のために力をお貸しください。ぜひともお願いいたします。ここだけの話ですが、東メイス特産の琥珀色のアレをただいま1ダース取り寄せ中です。自分のお国自慢をするわけではありませんが、特級品の自負はあります。よろしければ授業料代わりに納めさせてください」
横からミシコが加わった。
「オルシニバレ産のワインもあります。カレナード・レブラントには後見になるヴィザーツ屋敷がありません。ですから僕達が支えてやりたいのです」
艦長はにんまりした。
「ナサール・エスツェットにミシコ・カレント。麗しい友情だ。特産品は1ダースとは言わん、それぞれ5ダース用意したまえ。練習は休日以外の週6日、午後8時30分から90分みっちりやる。私の授業は厳しいぞ。
それからナサール君、鏡のある部屋を探してくれたまえ、明日からでもそこが必要だ」
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