挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

17/388

第1章「禁忌破り」14 新たな望みの戸惑いよ(挿絵有)

女装の場面があります。苦手な方はご注意を。
春分祭の前に15歳になったばかりの彼は、オルシニバレを離れてみたくなったのだ。
その気持ちに気づいたのは2ヶ月前、ガーランドが調停開始のためオルシニバレ市の近くに降りた時だった。遠目にも懐かしいガーランドの輝きは彼の胸を打った。以前にもましてマリラとの思い出が鮮やかによみがえった。かつて父と巡った懐かしい土地が胸をよぎった。オルシニバレを離れアナザーアメリカを旅する自分の姿が急激に彼の心で膨らんだ。
このところ図書室で各地の伝説やガーランドに関する説話集に夢中になっていた。それをフロリヤが知っていても、彼の胸の内までは分からないはずだ。でも、女というのは勘が鋭いから…と考えたところで仕事場に着いた。
製図室長に明日のことを伝えて、製図用の紙を広げた。
挿絵(By みてみん)
春の風がオルシニバレの広大な谷間を抜けていった。東オルシニ山脈と西オルシニ山脈に挟まれた広大な谷間、それが南北に細長い高原の領国オルシニバレだ。
遥か昔、アナザーアメリカ創生の嵐が吹き荒れた時、この谷はかろうじて人が住める場所として残った。そのため、創生以来の歴史が長かった。
領国が成立してからは、東オルシニ山脈の東側の海沿いの諸領国、西オルシニ山脈西側の大農業国ミセンキッタ領国、南からはマルバラ領国の街道が伸び、北のメイス諸領国からは運河が入り込んでいた。
交通の要衝となったオルシニバレには独特の活気があり、人々には新進を好む気質があった。
カレナードはここを故郷にしようと考えていた。
ここで育ったことに何の不満もなかったし、シェナンディの采配には深い恩義を感じていた。
急に訪れた新しい願望は、彼を戸惑わせてもいたのだ。
「奨学生試験に合格して一人立ちするのが先決じゃないか!」
彼はカラス口をインク瓶に思い切り突っこみそうになり、あわてて手を止めた。室長がそれを見ていて、落ち着けと身振りで示した。少年はゆっくり頷いた。
フロリヤが何も気づいてない可能性もあるのだから、明日はそれを確かめればいいと思い直した。
「フロリヤさんは僕に誕生呪を聴かせてどうする気なんだろう。
確かにあれは大切な呪文だ、僕達アナザーアメリカンはあれをヴィザーツの方々に唱えてもらわないと生きられないんだから。
彼女は気まぐれな人じゃない、きっと理由があるはずだ。」
翌日は冷たい雨が降った。
カレナードはフロリヤに手早く淑女の外出着を着せられ、雨よけのマントを羽織ると若い婦人になった。帽子の前に淡いピンクのオーガンジーを垂らすと彼を知っている者でも分からないだろう。
学校から帰ってきたマヤルカが「私の男装より良い出来だわ!」と唇を尖らせた。それでも彼女はいそいそと口紅を持ってきて、カレナードのドレスの裾から覗く華奢なブーツを確認した。
「大股で歩かないのよ。古典ダンスを踊るみたいに姿勢良く。出来るわよね!お返事!」
「…はい。ダンスですね、マヤルカ先生。」
カレナードはこの世で最後の味方を失った気分になった。
姉達が部屋を出たあと、マヤルカはその辺にあった淑女の帽子を頭に乗せた。
「あいつ、まるっきり女だわ…あんなに化粧映えするなんて。」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ