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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」15 吠える新参男子達

次の日、カレナードは少々頭痛に悩まされたが、訓練後のエア・シャワーが終わる頃にはそれが吹き飛ぶような知らせが飛び込んできた。
夏至祭の踊り比べに女王マリラが出場するというのだ。その知らせは怒涛のようにガーランドを駆け巡っていた。
しかもパートナーに新参訓練生を指名したという噂まで一緒で、それは厳しい強化訓練の恰好の憂さ晴らしとなった。
さっそく男子訓練生棟の1階ホールに新参達が集まって、ホールから2階へ続く大階段の途中にナサールとカレナードとミシコを賑々しく祭り上げた。古参や好奇心旺盛な乗組員も多数混ざっていた。
男達は半ば興奮状態で、女王と新参代表者の名を叫んでいた。
誰かが「カレナードに何か言わせろ」と叫んだ。ナサールは両手を挙げてお祭り男の役を務めた。
「皆の衆、静粛に!ここはひとつ、我らが代表の言葉を拝聴しようじゃないか」
彼はカレナードの肩を叩いて、皆にぶちかましてやれと合図した。
当のカレナードは頭に来ていた。リンザに馬鹿にされ、リリィに凌辱され、今度はマリラだ。図書館長の女難の予言は当たっているのかもしれない。
しかし、女王のやり方は度を越えていると彼は拳を握った。
彼の直感は、マリラが女王の権限を振りかざし自分を夏至祭で晒し者にするのだと、女王に狙われたのだと、勝手にそう言っていた。
彼は先日の女王らしくないマリラの言動に多少腹を立てたが、今はそれ以上の怒りが彼を支配し、彼を突き動かす力になった。
一歩前に出て、カレナードは腹を括った。
「僕はここに宣言する。新参代表を務めさせていただく栄誉にかけて、女王マリラの腕と腰に手を回す名誉にかけて、今日より先の踊り比べに関する試練に対し!僕は一切泣き言を言わない!
15曲を踊り切り、最後まで舞台に残ることをここに誓う!女王にも勝つぞ!」
カレナードは拳を振り上げて叫んだ。階段の下の連中も拳を挙げて「おお!」と応じた。
カレナードはなおも続けた。
「矢でも鉄砲でもレポートの山でも持って来いってんだ!」
「おお!」
「強化訓練がナンボのもんだ!」
「おお!」
「新参の底力を見せてやれ!」
「おお!」
「オンヴォーグ!オンヴォーグ!新参訓練生に栄光あれ!」
盛大な雄叫びが上がり、カレナードの奇妙な口上は終わった。まだ足を踏み鳴らして騒いでいる連中を、何人かの女がホールの外から見ていた。ミンシャはプッと噴いた。
「男って可愛いというか単純というか」
「全くだわ」
隣にリンザ・レクトーが来ていた。カレナードの練習相手を断ったことで女子の間で一躍有名になっていた彼女もこっそり様子を見ていたのだ。ミンシャは彼女をからかった。
「あンた、本当はカレナードが気になってたンだ」
「違うわ。彼には頑張ってもらわないと張合いがないでしょ。やっとエンジンがかかったって感じよね。彼の踊りは夏至祭に間に合うのかしら」
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