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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」13 リリィ、強襲する

彼女も立ち上がり、スカーフで髪を覆った。生気が体中から放たれ、まとわりついた芝草が落ちて行った。膝から下の裸足の肌が生々しいほど瑞々しくなった。マントを羽織るとすっかりいつもの女王に戻っていた。
「怒るがいい、カレナード。しかし、忘れよ。そなたに命ずる。私の死など忘れよ。休日はもう終わりだ。夏至祭までにすることは山ほどあるぞ」
マリラとカレナードは不思議とてらいなく互いを見つめた。
思いがけない問いと答えの向こうにあるものを探すかのようだった。
そして無言で別れた。
マリラはメンテナンス用のエレベーターに向かって去った。カレナードの心はマリラの命令に従えなかった。
「マリラさまが死にたがっているとしたら…ガーランドは飛べなくなるのでは…。どういうおつもりであのようなことをおっしゃるのか…。まったく…」
休日の宵は複雑な思いと腹立たしさが交錯する中で過ぎて行った。
週明けは憂鬱だった。訓練スケジュールの影響でリリィの診察が週末から週明けへと移動していたのだ。
ダンスの練習を早めに切り上げ、午後9時に施療棟群へたどり着いた。足取りは重かった。
「お嬢さんのためだ…行かなければ…」
カレナードはなんとか自分を急き立てた。静かな建物の中で、リリィは苛立って待っていた。
「遅いわよ。こちらは夜間演習の都合をつけて時間を作っているのに、訓練生だからって学生気分でいられちゃ困るのよ」
机の上には食べかけの戦闘食があった。
カレナードはブラウスの下のコルセットを外そうとしたが、紐が金具に引っかかった。
リリィはコルセットを掴んで彼を引き寄せ、なんの断りもなく鋏で紐を切った。
「気が利かないったら。こんなもの、着けずに来ればいいものを」
コルセットは床に落ちた。この乱暴な扱いにとうとうカレナードの堪忍袋の尾が切れた。数ヶ月に及ぶリリィの非人間的な態度に対し、ついに我慢の限界が来た。
「あなたは優秀な研究者でしょうけど、人間としては最低だ。研究材料なら何しても許されると考えているなら大間違いだ。もうあなたの診察は受けません。艦長に言って、担当を変えてもらいます」
彼はコルセットを拾い上げて上着で包み、扉に向かった。
「お待ち。ただで済むと思わないで欲しいわ」
リリィは腰に下げていたロープを素早く輪にして立ちはだかった。驚くべき巧みなロープさばきでカレナードの右手首を捕えた。ロープがリリィとカレナードの間で張りつめて震えた。少年は怒りに燃えて吐き捨てた。
「医者のやることじゃない」
「お前のその態度を改めさせてやるわ。私をただの研究者と思って甘く見ないことね」
カレナードは左手に抱えていたコルセットを放り出すと、ロープを掴んだ。そして引くと見せかけて、いきなり女医に体当たりをかけた。リリィは身をかわし、カレナードはリリィの机に突っ込んだ。リリィは素早く少年の脚から肩までロープを回し、あっという間に体を机に固定してしまった。もがけばもがくほどロープは体に食い込んだ。反撃のために掴んでいたリリィの鋏さえ奪われた。
「く…くそおっ!年増のじゃじゃ馬の朴念仁の気狂い医者め。僕に何をしたか、皆に言ってやるぞ」
次回はかなり暴力的かつ性的な場面がありますので、苦手な方、18歳以下の方は避けていただくようお願いいたします。
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