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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」12 死と女王

カレナードはまだポルトバスク市での一件を引きずっていた。ハーリを連れて情報部へ行ったのは、つい一週間前なのだ。
女は投げ出されたように横たわっていた。膝までのリネンの下着姿で、上半身は厚手のスカーフで覆われていた。
「死んでいるのか。後で埋めるんだろうか。本当にマルゴさんなのか」
彼は脈を確かめようと冷たい手首に触れた。女はいきなり起き上った。
「何奴!」
スカーフが落ちて、女王マリラが寝起きの顔で現れた。
「…なんだ、紋章人か。」
カレナードは驚きのあまり、声も出なかった。
「どうした、迷子にでもなったか」
「そ…そんなところです」
カレナードはやっと答えたが、まだ驚きの中にいた。むしろ狼狽に近かった。
彼女は言った。
「なぜ私を恐ろしいもののように見るのか」
「女王が1人でこのような所で眠っておられるとは思いませんでした。それで、死体と見間違えました。
脈を測ろうと勝手に触れ、失礼いたしました」
「死体か、そうか…死体に見えたのか。死体か、ふっ」
マリラは鼻で笑った。それから機嫌のいい時に見せる鷹揚な言い方でカレナードに座るよう促した。
「どうだ、草が暖かいだろう。ここは施療棟の管轄だが、今日は誰も来ぬ。私のお気に入りの場所の一つだ」
生気は徐々に甦りつつあったが、マリラの皮膚はまだ乾いていた。
カレナードはマリラの横に座った。彼女が回復するのを見守っていたが、彼は突然ポルトバスクの出来事を思い出した。
「マリラさま、お一人でいては危険です。先日のようなことがもうないとは限りません」
「ジーナは私がどこにいるか分かるようにしてある。案ずるな。
私とて1人になりたい。そなたも迷子になるほど、秘密の居場所を探してここまで来たのではないのか」
「しかし、いざという時にお傍に誰もいないのはいけません」
カレナードはなぜか強く主張したかった。それに負けないくらいマリラは言った。
「案ずるな、私はそう簡単には死なぬ身だ。そなたは生き脱ぎを見ただろう。あれと同じだ。
ウーヴァは私に魂の安息をもたらしてはくれぬ。仮に玄街の暗殺者が私の頭を打ち抜いたときは、私をあの部屋に放り込め」
カレナードはむっとした。マリラの言葉に女王にあるまじき捨て鉢な何かを感じた。
「あなたの死体を見るのは御免こうむります」
「ふふふ、私とていつの日か、この世から消えるぞ、カレナード」
「おやめください。ガーランドはどうなるのです。そして調停を司る浮き船に何かあれば、アナザーアメリカはどうなりますか」
「ガーランドなしではやっていけないと申すか。アナザーアメリカンはいつまで私に頼れば気が済むのだ。おちおち死ぬこともできぬわ」
「女王のお言葉とは思えません」
カレナードはいきなり立ち上がった。彼は初めてマリラを見下ろす位置に立っていた。
「あなたは死をお望みですか」
マリラは唇だけで笑った。
「怒ったか、紋章人」
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