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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」11 独り遊びの午後

カレナードはキリアンには愚痴を言った。
「ああいうの、不愉快なんだよ。…なぁ、キリアン」
「女心はよく分からないけど、男のくせに女体の特権を持つ君に嫉妬しているのかもしれないな」
「僕にはとてつもなく不幸だ」
「特権を少しは生かしたらどうだい」
「どうやって」
「女性の体の方が持久力があるんだ」
カレナードは反論した。
「総合的な体力は男が高いんだ。筋肉量の差は絶対に越えられないんだぞ」
「だからさ、お前は筋肉量は男の平均より少し低めだけど、女よりは格段に多い。それに持久力が加わってるんだから、今は総合的に男と女のいいとこ取りの状態なんだよ。それが特権だ。
パートナーが誰でも、息を合わせて15曲を踊り切ってみせろよ。さいわいリンザとは組まないさ。新参同士の組み合わせは外されてるようだからな」
彼らは初練習をした。 
ナサールはカレナードに指導者が必要だと言った。
「この程度じゃお前はリンザに負ける。それだけは俺のメンツが許さないんだっ!」
キリアンはお祭り男の上げ足を取った。
「メンツが許さないんじゃなくて、プライドが許さない、だろ。もしくはメンツが潰れる、だ」
「どっちでも似たようなものだろ」とむくれるナサールにカレナードは頼み込んだ。
「教師は必要だよ。 ナサール、探しておいてくれないか」
午後に風呂を使った後で、カレナードは秘密のベランダ部屋へ行った。1人になりたかった。百合の浮き彫りのある壁にもたれ、手は胸に置かれていた。
「踊ると揺れるんだよな…、まったく。コルセットを変えるべきかな…」
強化訓練のためか、ベランダからのガーランドはこれまでと違って見えた。彼はふと遊び心にかられた。訓練で覚えた抜け道を通って訓練生棟まで戻ることにした。
ちょっとしたゲームだ。
ベランダの外に出て、第3甲板に降りる梯子まで行った。下を覗くと甲板上に施療棟のチームが緊急治療の訓練をしているのが見えた。
リリィ・ティンが戦闘服に緑十字の腕章をつけて治療の優先度を判定しているようだった。
「ここは鬼門だ」
カレナードは甲板の上層通路の端まで行った。案の定、隠し扉があり、船体の外縁に沿った回廊に出た。
勘を頼りに上層天蓋下の訓練用地に出る通路を探した。
回廊にはいくつか扉があり、それ以外の壁面には植物の栽培ポットが並んでいた。5番目の扉を開けた。訓練用地が雑木林の向こうに見えた。
「よし。行けそうだ」
彼は林の中で睦みあう恋人達を横目に見た。羨ましかった。いつか自分にもあのように過ごせる時と相手があるだろうか、と自問してみた。答えは出なかった。
訓練用地の手前には高い土手があってどうしても登れなかった。仕方なく土手沿いに進んでから、メンテナンス用のエレベーターに乗った。
その窓から施療棟が見えたところでエレベーターを止めた。薬草が匂う畑の向こうに建物があった。それに向かって歩いて行った。
そろそろ日が傾く頃になっていた。
畑の途中の葡萄棚を通り抜けようとして、ギョッとした。棚の下に女の白い脚がだらしなく転がっていた。裸足の皮膚は硬く乾いて、まるで生気がなかった。
「まさか…マルゴ・アングレーの…死体…」
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