挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

164/388

第5章「夏至祭の前」10 リンザ・レクトー理論

ナサールは飛んできて喜んだ。どう見てもお祭り男そのものだった。
「やっぱりお前だ。やると思っていたさ。艦長のお墨付きも貰ったし、明日からの練習場所とダンス教師を探さなきゃ。
僕に任せろ。伴奏はヤルヴィとハーリだ、頼むぞ」
キリアンがどこか放心気味のカレナードの肩を叩いた。
「よく残ったな。頭の中がまだ渦巻いているんじゃないか。おい、カレナード、何か言えよ」
「自分でも信じられない…。一度転んだのに」
「艦長が残したんだから十分やれるってことだ。忘れないうちに振付をメモしておこうぜ」
次の日は休日だった。
午前10時にカレナードと伴奏係とシャルとナサールは練習場代わりの訓練生棟の食堂に集まった。パートナーはリンザだと誰もが決めてかかっていたが、彼女は意外な理由でそれを突っぱねた。
「レブラント君は女でしょ。女同士で踊るなんて気持ち悪いわ」
カレナードはつとめて冷静に答えた。
「僕はれっきとした男だよ、リンザ・レクトー」
「いいえ、あなたとは踊れない。理屈じゃないの。分かるかしら」
ナサールは彼女を説得しようと頑張った。
「俺達はカレナードを男として扱っているんだ。体は女でも、彼は彼なんだよ。実習は男子のメニューをこなしているし、頭の中と心意気は男さ」
リンザの顎がクイっと上がった。
「私は形態と精神は切り離して考えない主義なの。彼の中身が体の影響を全く受けてないなんて、絶対にない。
私は自分でダンス教師を見つけるから心配ご無用よ。レブラント君には悪いけど、抱き合って踊れないわ」
彼女の態度は施療棟のリリィ・ティンを思わせた。カレナードはリンザに詰め寄った。怒りを抑えていても、腹の底で煮えくりかえっている感情は言葉に滲んだ。
「そうか、君は僕の男性性をはなから否定するんだな。僕も形態と精神は別々の存在とは思えないけど、君は僕の一部分だけを見て、人間性まで否定するのか」
「そこまでしないわ。ただ、あなたが私と同じ体ということがだめなの。悪く取らないでよね」
「それなら僕は君より長く舞台に残るからそのつもりでいてくれ」
リンザは挑戦は受けて立つと言い残し、部屋を出て行った。シャルが喚いた。
「なっ!何様だよ、あの女!」
カレナードはリンザが消えた扉から目を離した。
「彼女を罵っている間があるなら、早く練習した方がましだ。ナサール、相手を頼めるか」
ナサールはキリアンを呼んで来いと言った。
「あいつは13曲までは大丈夫だ。女性パートくらい朝飯前でやってもらうぞ。文句垂れるなよ、カレナード。
男同士だろうが、女同士だろうが、この際かまってられるか。1000ドルガを取って、リンザの鼻っ柱を折ってやれ!」
ヤルヴィとハーリは「エスツェット班長は分け前が欲しいんだ」「いや、この状況をおもしろがってるだけだ」とひそひそ言い合った。
キリアンはレポートを放り出して、やって来た。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ