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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」9 艦長、選抜する

五の月の第2週末、夜間訓練に入った飛行艇部隊とその候補生の機影が窓に流れる頃、大武闘室に新参訓練生が集まった。
ヤルヴィとハーリはそれぞれ楽器を抱えて来た。
「僕達の演奏はプロ級だから。期待してて」
そう言って、意気揚々と楽譜をセットした。他にも3人の新参生が伴奏の仲間入りをしていた。進行役のナサールがダンス教師を紹介した。教師は艦長のワレル・エーリフだった。
「今晩は。紳士淑女の諸君。覚悟はしてきたかね」
中央にしつらえた円形壇上にエーリフは軽々と飛び登った。彼は愉快そうにヴィザーツの卵達を見渡したが、目は鷹のように鋭く、笑っているようには見えなかった。
カレナードの隣でアレクが顔をしかめた。
「彼は容赦ないぞ…」
カレナードはここがただの練習会場でなくなる予感に襲われた。曲が進むにつれてそれは予感から確信に変わった。練習ではなく、事実上の選抜だった。
早くも第1曲で5人が「帰ってよし」の洗礼を受けた。洗礼を受けた訓練生は憮然と壁に張り付いて、誰が最後まで残るか見る側に回った。
エーリフは踊りを少しずつ振りうつしで教えていったが、どこに目が付いているのかと思うほど的確に少年少女達の動きを見抜いていた。
5曲目が終わった時、残っているのは3分の1になっていた。
V班で残っているのはキリアン、ミシコ、カレナードだった。カレナードは女子Y班の方をちらっと見た。マヤルカとミンシャとルルが残っていた。マヤルカが意地になって真っ赤なスカートを履いていた。
エーリフはパンパンと手を打って、残りを集めた。
「では、ここからは私が1曲を全部先に踊って見せるから振りを覚えなさい。そのあと全員でやってみよう。多少の間違いはどうということはない。
肝心なのはセンスと情熱と根性があるか否かだよ」
踊りは全て違う種類のリズムと曲調を持っていた。
アナザーアメリカの民謡調がある一方で、厳かな祈祷師の詠唱調があり、明らかにヴィザーツだけに伝わる曲があった。
ヤルヴィの練習のおかげで曲だけは耳にしていたので、カレナードは一曲の振りを覚えてすぐに忘れ、次の曲に集中するやり方で11曲目が終わっても残っていた。
彼の他にはキリアンとミンシャ、他に4人が残っていた。
壁際の連中はもうヤジを飛ばす気にはなれなかった。
円形壇が取り除かれたフロアに立っている艦長と7人の周りの空気は張り詰めていた。
そのまま13曲目が始まり、最後の踊りが終わった時フロアに残っているのはカレナードと黒髪を複雑に編み込んだ女子S班のリンザ・レクトーだけだった。
エーリフ艦長は一仕事終えて満足そうだった。
「よしよし、代表は決まったな。おめでとう。
新参の諸君は来たる夏至祭で君達の代表がさっさと舞台上から消える不名誉を負わないよう、この2人を鍛えるプログラムを用意してやるんだ。
リンザは素晴らしい才能だね。カレナード・レブラント、踊りは覚えたかい」
「全部忘れました」
エーフリは「それで結構」と頷いて帰っていった。
横でリンザが「あんた、信じられない人ね」とあきれていた。
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