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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」8 思惑

ミシコは清拭コードで両手の泥を落としてから言った。
「死にそうなのは、新参みんな同じだ。女子だってやってる。お前だけじゃないぞ。
とにかく僕に付いて来いよ、シャル。兄貴に勝ちたいだろ」
シャルは甘えてすねてみせた。
「へっ、どうせニコル・ブロスは優秀な三年生だよ。飛行艇部隊の候補生筆頭さ。俺みたいに軟弱芸術家はここではお呼びじゃないってーの」
ヤルヴィはシャルの甘えぶりが気に障った。
「それを言うなら、年少の僕がここで泥まみれになってるのは無意味なのかよ。屁の河童!」
「何だと、誰が屁の河童だって。このおちょぼ小僧」
通りかかったエンゾ・ボンゾが一喝した。
「無駄に騒いで敵に発見されたいですか。休憩時間に油断してよしとは言ってませんよ。 ところでおちょぼ小僧って何ですか」
ヤルヴィは敬礼して答えた。
「僕の唇の形のことで、シャル・ブロスがこう言ってバカにするのです」
エンゾは「それは災難」と軽くあしらって小山の向こうへ消えた。
食べ終わるとカレナードとヤルヴィはその場に転がって眠った。キリアンも膝を組んだまま寝ていた。アレクがやれやれと肩をすくめた。
「強化訓練に加えてダンスの練習か。へこたれない奴らだな、班長」
「ああ、僕達は見張り役といくか、アレク。ほら、シャルも頼むぞ」
夕方のエア・シャワーの時刻まで、彼らは毎日汗と泥にまみれ続けた。限りある自由時間は祭り衣装を繕うのとレポートを書くのに費やされた。
夏至祭の準備と関係なく過ごしているのが、参謀室長と情報部副長だった。トペンプーラはヨデラハンに集めた資料を渡して、共に検討していた。
「それで参謀室の方はいつでも動けるのですネ」
「作戦は30パターンを揃えてある。今月の訓練はどれもそのパターンに対応できるよう組んだのだ。月末に一息ついたら、あとは夏至祭の直前までテコ入れせねばな」
「艦長は士気を高めるのにもってこいですが、夏至祭の前になるとダンス教師に変身しちまうのが、玉に傷なのデス」
「いいさ。来年の今頃はどうなっているか分からん。夏至祭はしばらく中止になるかもしれん。大山嶺の探索は進んでいるのかね」
「ミセンキッタの大河以西のヴィザーツ屋敷と情報部の特別ルートに総動員をかけていますからネ。夏至祭が終わってガーランドが大山嶺沿いに南下する頃にはある程度成果があります。
ところでヨデラハン殿はポルトバスクに降りてトルチフで合流するまで、何やってたのデスか」
「ヒッチハイクだ」
「ただのヒッチハイクじゃないでしょ」
「蟻になった気分だったよ。やはりガーランドから見下ろしているばかりはいけないね。
トルチフのコロニーにもたくさん寄ったさ。玄街が町を作っているのじゃないか、じっくり観察しながらね。君も地上に降りてみろ」
「もちろん。夏至祭の後には皆さんよりお先に南へ行ってます。その間、ケペル部長をよろしくお願いしますネ。彼、意外と寂しがり屋なのですヨ。
それと、女王が羽目を外されないよう、やんわり釘を刺しておいていただけませんか。祭りになるまでは、ガーランドの緊張感を解いてはなりませんヨ。
また玄街さんに付け入らせるのはイヤでしょ」
「トペンプーラ、切れ者のわりには心配性だね」
「夏至祭はヴィザーツにとって大切なものです。玄街との戦いのためにも、祭りは思い切りよくやるものです。
ね、ヨデラハン殿」
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