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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」7 虚しい恩寵

やがて女王は新参訓練生達が兵装で整列している場にもやって来た。
第三層小天蓋下の回廊での射撃訓練が始まるところだった。キリアンはカレナードの頭部と頸回りの防護パッドのボタンが掛け違ったまま並んでいるのに気づいた。
「マリラさまが目の前に来るときに限って、こうなんだ。おい、カレナードったら」
キリアンは急いでカレナードの防護パッドを直そうとしたが、その前に女王が演説の位置に立ってしまった。
マリラは新参訓練生向けの訓示を垂れた。それから1人1人の名を呼んで、女王の恩寵を与えた。特別なオンヴォーグだった。最後にV班の番が来た。
「オンヴォーグ、ミシコ・カレント」
マリラの声は守護のオーラとなって、頭を下げた班長の頭上に煌めいた。
「オンヴォーグ、キリアン・レー。アレク・クロボック。シャル・ブロス。ヤルヴィ・アダン」
仲間達は誇らしく恩寵を授かった。一番最後がカレナードだった。
ミーナ・クミホが死んだ夜、気まずい別れをした余韻を引きずっている場合ではないのに、マリラもカレナードもあの瞬間を思い出した。
再び石像となり、私人の心を閉ざしたマリラ。再びマリラへの怖れと失望の陰りを帯びたカレナード。両者は互いの目の中にわだかまりを見た。他にはない緊張が走った。
しかし、2人してぐっとそれを飲み込んだ。マリラは頭を下げたカレナードに言った。
「オンヴォーグ、カレナード・レブラント」
恩寵はかろうじて彼の上に煌めいた。マリラが去って、ジーナが女王の後に従った。彼女はカレナードの傍を通る時、立ち止まった。
「よく我慢しましたね、紋章人」
「ジーナさん、僕は…」
「マリラさまも我慢したのです。今は辛抱なさい」
カレナードは平静を装って、女官長に頷いた。横で聞いているキリアンには何のことかはかりかねたが、女王とカレナードの間に溝が出来ている気配は明らかだった。
彼はむっつり黙りこんでいるカレナードのパッドを直してやり、気合いを入れた。
「ウラ!回廊を突っ走るぜ!目標は第3甲板ポイントTだ。行くぞ、カレナード!」
V班は装備を背負い、回廊の柱から柱へと駆け抜けた。
新参の強化訓練の目的は基礎体力を上げて白兵戦に持ちこたえられるようにするものだった。そのうえで適正によって訓練期間の後半には各部署に配置され、夏至祭まで一番下っ端を務めることが決まっていた。
講義は半分に減った。五の月の間はひたすらガーンラド中を駆け回り、武器の組み立てと射撃、ついで体術の特訓が組まれていた。
「ハードル高すぎやしないか。俺、死にそう」
シャルは上層天蓋下、訓練用地のど真ん中で野戦食の包みを背嚢から取り出して、簡単な昼食準備をした。
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