挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

159/388

第5章「夏至祭の前」5 求婚の何がおかしい?

カレナードはミーナがいなくなった図書館に行ってみた。キリアンが一緒だった。
館長が病気から復帰して、新しい司書もいた。彼らはミーナは不慮の事故に遭ったと言った。
トルチフ領国の記録閲覧を申込むと、それらは持ち出し禁止で館長室で閲覧する決まりだった。館長はお喋り好きの老人で、いくらでも質問に応じてくれた。
「両トルチフが調停準備会を設けようとしたのを、ヴィザーツは知っていたのですか」
「あ、うむ。もちろんだな。当時もトルチフの町にはヴィザーツ屋敷があったわけだからの。彼らは必死で領国府に働きかけた。
それ、そこの記録を読んでみ。
連日のように調停開始用の文書を用意して、国府の重鎮と領国主に会っていたようだの」
2人は手書きの古い文字を追った。
藍のインクで書かれたそれは懇願にも似た調子で、これ以上トルチフ領国民の血を流してはならないと訴えていた。キリアンが言った。
「ガーランドが直接トルチフに出向いてまで調停を勧めたのに、なぜトルチフは受け入れなかったのでしょう」
「あ、うむ。
本当は双方ともにいいかげん戦争をやめたかっただの、時期を逸しただの、領国府内の強硬派が調停を阻止するためヴィザーツ屋敷を襲撃しただの、領国民の恨みと怒りが収まらなかっただの、軍が新兵器を開発して暴争に拍車がかかっただの、
後世の研究者は分析したのだが、お前さん方はどう思うかの」
館長は白く垂れた眉毛の下の大きな瞳をぱちくりさせて、問うた。 キリアンとカレナードは、出来レースだなと顔を見合わせてから、声を揃えて答えた。
「今、館長が言われたことが全て重なったのでしょう」
館長は満足げに頷いた。そして、ガーランドが来たことでますます事態はややこしくなったと言った。
「どちらのトルチフもガーランドを味方につけようとしたが、うむ。そんなの無理にきまっておる。
お分かりかの、若いの。領国主は兄弟揃って心の底は傲慢だった。よりによって女王をたぶらかそうとした」
カレナードは思わず噴きだしていた。
「え…マリラさまを…ですか、あはっ、あはっ、あははははははは」
キリアンは親友が笑いの発作に襲われている理由が分かるような気がした。
「若いの、女王といえばマリラさましか、おるまい。女王はたびたびガーランドを降りてまで調停開始を彼らに勧めた。彼らはそれに従うふりをしただけで、実際には戦争をやめる気がなかった。
兄弟のくせに争い事が好きな奴らだ。どちらももうひと押しで勝てると踏んでいたわけだ。そして愚かにも女王に結婚を申し込んだと言われている」
「マリラさまに求婚って、あり得ない。それはおかしいですよ」
カレナードはまた笑いだした。 館長はいぶかしげに彼を見た。
「うん、ふむ。 若者にはおかしいかのう。言っておくが、このバカ兄弟もけっこう若かったようでの。分別を知らんとは哀れと思わんか」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ