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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」3 滅亡の火

その日、歴史学講義は場所を変えて行われた。マイヨールは訓練生を展望回廊へ連れ出し、眼下に広がる台地を眺めながらトルチフ大火を語った。
「我々ヴィザーツにとって、トルチフは特別な場所です。トルチフ大火について簡単に説明してください。女子Y班はいかが」
ララとルルとアラートがその役目を引き受けた。
「昔々あるところに、東トルチフ領国主と西トルチフ領国主がいて、2人はけっこう仲よし兄弟でした。ハイ、続きはルル・ケラーです」
「ララ、『昔々あるところ』じゃなくて、400年前のことよ。二つの領国の間の谷間からお宝発見!それはスゴイ金属鉱脈だったわ。困ったことにどちらの領国も谷を独占したくなって、自警団を出して占領しようとしたの。これって調停するべきだったと思うわ。ね、アラート・ノアゼット」
「ルル、調停するかどうかは当事者か決める事よ。で、当時の当事者はガーランドを呼びませんでした。
調停準備会を持とうとした時には遅かったの。30回の戦闘で双方の領国民は互いに憎しみ合い、収集がつかなくなっていたわ。領国の政治には不干渉を貫くガーランドもこの時ばかりは、積極的に調停を勧めた。
半年間説得を試みたが、兄弟領国主の対立は深まるばかり。双子さん、エピローグを頼んだよ」
ララとルルは講談師よろしく、両トルチフの滅亡を語った。
「女王説得の甲斐もなく、兄弟同士で殺し合うとは何事ぞ。
お怒りになった女王はガーランドの全砲門を両トルチフに向けて仰った。5日間の猶予をやる、領国民は逃げるがいい、調停の力を軽んじる者の最期をアナザーアメリカにしらしめよ。
かくして5日目の夕刻、東西トルチフは灰燼に帰すまでガーランドの火に焼かれ滅亡したでございます」
マイヨールはヴィザーツがアナザーアメリカンに武力行使した唯一の事件がその後の歴史にどう影響したかと訓練生に訊く前に、アナザーアメリカンはどうとらえられているか披露して欲しいと、カレナードに頼んだ。
「アナザーアメリカンの間ではトルチフの大火伝説として広く知られています。
その昔、大河の西方、東トルチフと西トルチフの兄弟領国がガーランドの調停を拒否し暴争を始めた。女王の数十回の勧告にも応じず、二つの領国は互いに殺し合い、最後はガーランドの火によって滅んだ。その土地に領国が再び成立することはなかったと語られます。
アナザーアメリカンの子供達は『暴争を起こせば、トルチフのように焼かれる』という警句と一緒にこの伝説を聞いて育つのです」
訓練生の何人かが、アナザーアメリカンから聞いた伝説は自分の出身地では少々違うと言った。
ミセンキッタ中部出身の少年は、両トルチフの領主が兄弟ではなく父と息子だと言い、ミルタ連合出身の少女は女王が領主達に侮辱を受けて怒ったと言い、マルバラ領国では猶予は3日だったと言った。
マイヨールは伝説にはバリエーションが発生すると説明した。
「なぜだか分りますか。」
カレナードは先日聞いたマイヨールの言葉を小さくつぶやいた。
「伝説とは語り継がれた事実だからだ。
事実の根幹は変わらなくても、細部はアナザーアメリカンの想像力で変わっていったんだ…。」
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