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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第5章「夏至祭の前」

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第5章「夏至祭の前」2 夏至祭の高いハードル

カレナードは言った。
「1500年前の踊りか。君が出たらいいじゃないか、ナサール・エスツェットは見栄えも良いし、踊れるんだろう」
「お前、頑固だな。人の話を聞けよ。その踊りが問題なんだ。
最初の2曲は確かに1500年前のだよ。屁でもない素朴さだ。ところがその先は1500年分のアレンジがあってよ、6曲目あたりからガンガン難しくなる。
上級生の話では審査員が失格の旗を上げて、脱落者続出ってわけだ。おかげで観衆は大喜び。最後の3曲まで残るのは、多くて5組さ。
この前の班長会に去年の優勝者が来て、その踊りをやってみたんだが…男子の班長は誰もモノに出来そうにないってことが分かった」
「ミシコ・カレントも駄目だったの」
「奴さぁ、ミンシャ・デライラの前で恥をかいたって落ち込んでたぞ」
カレナードは肩をすくめた。
「男のプライドが邪魔をするってヤツだ」
「そうさ。お前、V班の名誉にかけてミシコの代わりに代表やってくれ。
この週末に新参の集会やる時に、全員でひととおり踊ることになったんだ。特別スゴイ教師を呼んであるんだよ。お前なら彼の目に適うさ。新参訓練生で1セクションなんだから、なんとかしなきゃ」
「十ヶ月訓練生は別セクションなの」
「そうさ。 向こうは今年に限って粒ぞろいらしいが、こっちはとことん不作なんだよ」
「どこまでやれるか分からないけど、その集会まで返事を待ってくれるかい。ナサール」
「よし。出るとなったら、できるだけ練習時間を確保してやるよ。班長会で提案するさ」
カレナードはけっこう面白そうだと思った。念のため訊いてみた。
「女王区画の代表者って、まさかマリラさまじゃないよな」
ナサールは大笑いした。
「それはない、絶対ない、ありえなさすぎだってば。お前の頭はぶっ飛んでるぞ」
「じゃ、女官の誰かだ」
「美人揃いだから楽しみだよな。くじ引きでお相手に当たったりしたらどうするよ。考えただけでゾクゾクするぜ」
カレナードはナサールがベル・チャンダルだけを見て、女王区画にあらぬ期待を抱いているのが分かったが、彼女らのしたたかさについては黙っていた。
マイヨール・ポナとジルー・トペンプーラという、年の離れた知己を得たことはカレナードの新たな支えになっていた。彼の心が晴れたわけではなかったが、心強さはあった。
彼はヴィザーツの中で認められたいと強く願うようになっていた。
ポルトバスク市での女王代役で心に射す陰は濃くなったが、かえって猛々しい何かに突き動かされそうな自分を感じていた。それがどこから湧くのか、自分でも判然としなかった。
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