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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」43  支配する者、される者

上層天蓋が音を立てて、閉じ始めた。ガーランドはニオララから東へ転進しつつあった。空は曇り、また嵐が近づいていた。
情報部副長は独りごとのように言った。
「今年のトルチフ詣では少し早いようですネ。マリラさまがトルチフのことで御自分をお責めになる時期がまた来ますか」
「トルチフ詣でって、あの伝説の東西トルチフ領国がまだあるのですか」
「まさか。炎に沈んだ両領国の遺構を訪ねて、ちょっとした慰霊祭をするのです。もちろんガーランドの甲板でネ」
「ああ、地上に降りるのかと思いました。あの禁忌の土地に…」
トペンプーラは少年の反応をおもしろがった。
「確かにトルチフ台地はあまりありがたくない場所ですが、近頃ではかなりの入植者がいます。伝説の畏れより開拓の勇気ですネ」
「時代が変わっているのですか」
「あなたはトルチフ伝説が怖いですか」
「いいえ。でも、教訓としての恐ろしさは感じます」
「トルチフを焼いたのがガーランド女王だからデスか」
トペンプーラの問いにカレナードの眉がピクリと動いた。
カレナードを帰してからトペンプーラはため息をついた。
「恐怖による支配…ですネ。女王は最初から彼を恐怖によって支配しようとしたのかしら。とにかく支配しようとしたのは間違いないですネ。
なぜだか分りませんが、出会った瞬間に2人の間にそのような力学が働いてしまったのでしょう。不幸ですネ。その不幸が代役作戦ではプラスの力になりましたが、この先どうしたものでしょう。
私がお膳立てしたところで、上手くいくワケないです。マリラさまは、玄街を相手にするより難しいのですから。
それにしても、おもしろい友人が出来ました。これからが愉しみです」
彼は情報部区画に茂る木立に目をやった。お気に入りの風景だった。
ガーランドは新緑の季節のただ中にあり、天蓋がすっかり閉じてしまうまで、木々の若葉は軟らかい音を立て小雨の恵みを受けていた。
カレナードはその下を走っていた。葉の隙間から落ちてくる水滴を振り払うような疾走だった。
やがて空には稲妻が走り、休日の終わりまで浮き船は嵐と共に東へと移動し続けた。
第4章は今回で終わります。次回から第5章「夏至祭の前」を始めます。
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