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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」41 優しい嘘

元気のないハーリだったが、彼はカレナードに言った。
「ありがとう、カレナード。お休みを潰しちゃったね」
「僕が捕まった時、ヤルヴィやマヤルカ達と一緒にマルゴさんの所に行ってくれたって聞いたよ。僕の方こそまだお礼を言ってなかった」
「ううん、僕は姉さんに会える口実が出来たから嬉しかったんだよ」
ヤルヴィは少々心配顔だった。
「アダン家の印璽が通用すると思うかい、カレナード」
「封蝋を使った理由はね、相手が情報部副長だからだよ。物々しい手紙の意味が分かる人だから。
最も差出人は僕だから、追い返されるかもしれない。覚悟してて」
エントランスでトペンプーラが本を読みながら待っていた。
「素敵な印璽でしたヨ、ヤルヴィ・アダン君。早速ですが、御友人のお尋ねに答えましょうネ」
カレナードはいつもと変わらぬトペンプーラの調子から、手紙が十分役目を果たしたと感じた。
「ハーリ・ソルゼニン、マルゴ・アングレーは病死しました。残念なことに彼女が心臓に病気があるとは本人も気づいてなかったようです。
彼女は次の仕事のためにポルトバスク市でガーランドを一時降りたのです。情報部の仕事ですから詳しく言えないのを許して下さいネ、ハーリ」
ハーリは頷いた。トペンプーラは丁寧に言った。
「彼女は市内のヴィザーツ屋敷に向かう途中で、突然倒れたそうです。同行していた者が医療コードを施しましたが、夜まで持たなかったと聞いています。意識は回復しないままだったそうです。
ソルゼニン君、情報部員が君を彼女の部屋から追い出したことは本当に失礼でした。マルゴ嬢は有能でネ、持ち物を一つ一つ検討する必要があったのですが、君には辛かったでしょう」
トペンプーラはハーリに封筒を手渡した。中には写真が何枚か入っていた。一番大きな写真にマルゴとハーリが並んで写っていた。マルゴは心から笑っていた。ハーリの口からふと言葉が漏れた。
「これ…僕が新参訓練生に入隊した時に、記念に撮ってもらったんです…」
彼はマルゴの葬儀は終わったのかと訊いた。
「ええ、ポルトバスクのヴィザーツ屋敷でネ。埋葬の方は故郷でする予定です」
「僕は親戚なのに…呼ばれなかった…仕方がなかったのですか、トペンプーラさん」
「彼女、あなたのことは我々に隠していたのデス。きっと、あなたを巻き込みたくなかったのでしょうネ。冷たいと思わないでクダサイ。
マルゴ・アングレーにとって、あなたは大切な人だったのでしょう。あなたにとってもネ。
さぁ、お帰りなさい。あなた達が一人前のヴィザーツになる頃には、彼女の気持ちが分かるでしょうから、しっかりお進みなさい」
訓練生達は副長に別れの挨拶をした。カレナードはヤルヴィとハーリに先に帰るよう促した。
「この前の誤認逮捕のことで、トペンプーラさんに言っておきたいことがあるから」
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