挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

151/388

第4章「春の嵐」40 マルゴの死を嘆く者

彼らは気持ちよく仕事に戻った。カレナードはゴミ箱を詰所の外にある集積所へ持って行った。書き損じのレポート用紙やメモの切れ端がほとんどで、それらは熟練のヴィザーツ達がコードを駆使して真新しい紙に甦る手筈になっていた。それらを指定の箱に入れた。
ふと人の気配に振り向いた。暮れかけた光の中にハーリ・ソルゼニンの姿があった。彼はひどく生気がなかった。
「どうしたんだい、ハーリ」
カレナードが話しかけても、彼はすぐに口がきけない状態だった。
「T班の班長を呼んでくるよ。それとも一緒に部屋に行くかい」
ハーリは突然泣き崩れた。4階にいたミシコが何事かと窓から身を乗り出した。
「マルゴ姉さんが死んじゃった…。マルゴ姉さんが!」
カレナードはギクッとした。彼女が玄街間諜で本来のマリラ暗殺者だったことも、トペンプーラが逮捕して情報部が取り調べ中のことも、彼は黙っていた。この秘密は一切漏らさず黙っていたのだが、ハーリの言葉は衝撃だった。
「本当なのかい、ハーリ。何かの間違いじゃないのか」
「姉さんは近いうちにガーランドを降りて地上勤務になるから、部屋に来るなって言われて…。でも、もう一度会いたくて…さっき…行ったら…情報部の人達が部屋を片付けてた…。
姉さんの事を聞いたんだ…まだガーランドにいますか…。そうしたら…マルゴ・アングレーは死んだって言うんだ」
「そんな…。そんなはずは…」
カレナードは、トペンプーラ達が彼女を洗いざらい喋らせたのち殺したのだろうかと考えた。そのおぞましさにぞっとし、すぐに否定した。いくら情報部でもそんなに簡単に人を始末出来るものではないと思った。だが、マルゴ・アングレーという名はこの世から消されたのだ。ハーリはしゃくりあげた。
「あの人達、何も教えてくれないんだ…マルゴ姉さんがどうして死んだのか、お別れが出来るのか出来ないのか…。
僕を追い出して…何も持ち出させてくれないんだ…」
階上から班長達が降りて来て、ハーリを部屋へ連れて行った。その話を聞いたヤルヴィはカレナードに相談を持ちかけた。
「カレナードにとって情報部は気持ちのいい所じゃないだろうけど、何日か居て顔見知りが出来たでしょ。だからさ、こっそりマルゴさんのこと聞いて欲しいんだ。
ハーリは納得したいんだよ。顔も見ずにお別れするなんて辛いじゃないか。
彼はすごくすごくすごくあの人のことが好きだったんだ」
「それは…そうだね…」
カレナードは果たしてトペンプーラが応じたとして、ハーリにマルゴの正体を明かして、彼が余計に傷つくのだけは避けたかった。
「ヤルヴィ、封蝋を持ってたよね。貸してくれないかな、ハーリのために」
彼はトペンプーラ宛の手紙を書き、わざわざ封蝋をした。それから夜になっていたが、情報部区画へ行った。
翌日、彼はハーリとヤルヴィを伴って、休日の午後の情報部区画を訪れた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ