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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」12 ダイナミックピープル(挿絵有)

カレナードの生活は9歳と14歳の時に大きく変わった。
9歳で出資寮内での初等学課はすべて終えてしまった。シェナンディは少年を中等学校へ飛び級で通わせる一方、自社の老職人マシュウ・バジットの弟子にした。学校は午前で終わるため、午後はマシュウの工房が居場所になった。
マシュウは非常に頭のいい老人で、教える術に長けていた。彼は金属加工の実技に入る前に、シェナンディ精密機械工業で最高級の材料と製品に触れさせたうえ、形状と質感を全て覚えさせた。
「わが社の品はどうかい、カレナード」
「とても美しいです。父の仕事道具を思い出します」
「そんなら、次は設計図の基本だかんね」
彼はカレナードが学校で行詰った関数問題を解いてみせた。彼は負けず嫌いだった。孫のような弟子をけしかけて「お前は出資寮の稼ぎ頭になれ!成金の若造どもに負けんじゃねえ」と熱くなるのだった。あまり熱心なので弟子はときどき「血圧があがるよ」となだめるのを忘れなかった。
マシュウはカレナードが左手首に付けている出資寮の紋入りバンドを、成長に合わして直してやった。バンドは身分証でもあり、就寝時以外は必ず身につけねばならない大切な物だった。カレナードは12歳からは自分でそれを直した。
老人は訊いた。
「学校の習いは出資寮で役に立ってるんか」
「修辞と歴史地理と文芸全科はけっこう使えるよ。この前、寮の予算陳情団に加わって領国府に行って偉い人達にいろいろ聞かれたんだ。世間話をしているつもりだったけど、向こうは僕を試していたんだよ。トルチフの大火伝説を詳しく語れとか、古典劇のセリフとか、四度例祭の由来とか」
「なるほど。数学はどうかね」
「数学はマシュウさんが一番のいい先生です。特に幾何学は」
「そうだろうよ。おっと、鉄砲玉のような娘がまた来たぞ」
マヤルカが男の服を着ていた。マシュウとカレナードは仰天した。
「服が汚れるから工房に行くなってメイドが言うのよ。秘密にしてよ。お礼にお姉さまが作ったハーブの飴をあげるから!お願い!」
これさいわいとマシュウは「蜜酒も欲しいのう、お嬢さん」とねだった。
カレナードはお嬢さんに盗人の真似をさせないでくださいと怒ったが、老人と少女はいうことを聞かなかった。
フロリヤは見て見ぬふりをした。彼女は彼女で家令に頼み込み、父に内緒で生誕呪の見届け人をするボランティアに参加し始めた。
挿絵(By みてみん)
「私はずっと考えていたの。
なぜ人間だけに誕生呪が必要なのか。馬も犬も鳩も産まれても誕生呪なしで生きていけるわ。でも、人の赤ん坊だけは3日以内にヴィザーツに授けてもらわなければ死んでしまう。
だから、現場に立ち会いたいのよ」
しばらくして、それは父の知るところとなった。そこで彼女は家の取引先の飛行機開発会社でテストパイロットもやると言い出した。
シェナンディは大笑いした。
「わしの娘はこうでなくてはおもしろくない」
カレナードはそんなシェナンディの父親ぶりが好きだった。
フロリヤは見かけによらず、豪気な女だった。
「助産所は興味深いわ。さまざまな女達が出産と誕生呪のために集うし、この目でヴィザーツ達を見ることが出来るのよ。彼らに会えるなんて助産所以外、どこにあるかしら。え、飛行機のことですって。自動車の次は軌道列車、そして軌道列車の次は飛行機だわ。サージ・ウォールを越えるのは無理だけど、アナザーアメリカは広いわ。私は自分で飛びたいの」
マヤルカは姉に約束させた。
「お姉さまが御自分の飛行機を持てたら、私を乗せて飛んでよね。ヴィザーツの飛行艇みたいに」
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