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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」37 誰も女王を疑わないが

マイヨールはトペンプーラの何かを思い出して微笑んでいた。
「今ではあのとおり。のらりくらりに見えるけど、中身はスゴ腕でしょう」
「彼に言われました。頭で整理できてなければ、心で納得もしていない、と。…分かってきました、そのとおりです…。僕は…」
カレナードはグラスに添えてあった左手の紋章を見た。
「そうです…、本当は僕は全然納得できていない。紋章人と呼ばれることに。マダム・マイヨール、僕の混乱の元は、おそらくこれなのです」
「カレナード、焦らないのよ」
マイヨールは少年の手からグラスを取り、紋章の刺青を手で覆った。
「居場所があるのはいいことよ。男子V班はあなたを認めているでしょう。ミシコ・カレントはあなたを信頼しているわ。
生き方も環境も変わったけど、やがて慣れるわ。あなたには力がある」
突然、彼は絶望に襲われた。
「そして、どうなるのですか。僕は紋章人です、女王の道具です。
最初にマリラさまは言われました、『自分の意思で生きることを諦めねばならぬ』と。
しかし、生き脱ぎのあとでは『共に歩んで欲しい。ガーランドの乗組員として、一人の人間として見ていたい』とおっしゃる。
どちらが本当のマリラさまなのか、分からない。分からないから恐ろしいのです」
カレナードは感情を抑えきれそうになかった。
「マダム・マイヨール、このままでは生殺しです。マリラさまのなさりようは、まるで…まるで…」
「まるで、何なの」
「まるで…ルールがありません…」
口から出た悔しさは、涙を誘発した。我慢し続けた涙だった。
マイヨールはカレナードを抱きかかえた。彼女は紋章人が落ち着くまで待った。彼は謝った。
「時々…コントロール出来なくなるのです。オルシニバレでこんなことはなかったのに…」
「いいのよ。あなたはもっと私に話すべきだわ。胸に溜めておかないで告白なさい。私もトペンプーラと同じくらい口は堅いわ」
マイヨールは彼とマリラとの間にあった出来事を知った。そのうえできっぱり言った。
「女王は、仕事には誠実で、情熱のある方なの。仕事をしている時が一番充実しているわ。
私が知る限り、彼女は仕事には私情を持ちこまないわ。
だから、あなたが恐れる彼女は、女王ではなく私人の彼女だと思うわ。おそらく不安定な人格をお持ちなのでしょう。
生き脱ぎのためにね…」
マイヨールの言葉は少しずつカレナードの腑に落ちて行った。
「あの方は不安定…」
「そうよ、人として不自然に生きているわ。
女王以外の部分はすっかり死んでいるようなもの…」
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