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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」35 伝説の意味

マイヨールはアナザーアメリカ創生の一節を諳んじた。
「アナザーアメリカ創生の時代、赤ん坊は産まれても3日のうちに闇に戻った。子供の声が聞こえない数十年の歳月が人々を打ちのめした。最初のヴィザーツが誕生呪を唱え、悲惨の夜がようやく明けた。浮き船の船主マリラ・ヴォーはアナザーアメリカにあまねく誕生呪を広め、ガーランドはヴィザーツの船となった。やがて大地に人の領国が現れた時、ヴィザーツは調停の役割を引き受けた…」
カレナードは息を飲んだ。
「創生伝説は本当にあったことなのですか…」
「そうです。伝説とは語り継がれた事実です。じきに講義でこのテーマをやろうと考えていたところよ」
「僕は…僕も無意識の抑止力を感じていたのでしょうか」
「幼い時はそうだったでしょう。
さらに、あなたはオルシニバレ市で調停期間を経験したわ。だから、無意識ではなくガーランドが調停の船でアナザーアメリカに無くてはならない存在と、揺るぎない価値観を持ったわ。でも、ここに来て、浮き船が強大な武力を持つ戦艦と知って価値観が揺らいだ。
危うい時期です。
カレナード、あなたが認めていた価値は、アナザーアメリカンとヴィザーツが2500年の時をかけて作り上げ、今も作り続けている宝です。それをもう一度確認してください。
調停とは形を変えた戦争、戦争の代替えなのです。ただ、例外もあるのがこの世の法則でね。トルチフの大火を知っていますか」
「ええ、アナザーアメリカンの間では、よく語られる伝説です」
カレナードは自分の口から出た伝説という言葉にハッとした。
「トルチフの…伝説…。トルチフの大火は実際にあったのですね。
マダム・マイヨール、玄街と戦争をしたら、アナザーアメリカのどこかをまた焼くことになるのでしょうか」
「少なくとも、トルチフ以来の死者と破壊を産むでしょう。
でも、彼らを放っておけば、アナザーアメリカの秩序は失われて、遠からず調停のシステムは危機に陥るわね」
マイヨールは極秘の女王暗殺未遂の話からすぐに玄街の目的を導き出していた。
「ガーランドに間諜を送り込むくらいだもの、彼らは本気で私達を潰す気ね。こうなると、たとえヴィザーツ同士の調停機関があったとしても、機能しないでしょうね」
「そうなのですか」
マイヨールのヴィザーツの心はふっと違う風を感じた。目の前の少年は、玄街をただの敵とは考えていないようだった。
「あなたにとって玄街はどういう存在なの、カレナード」
「わけを知りたいのです。僕の体を変えてしまったわけを。それだけじゃない、僕は首領のグウィネス・ロゥの顔を覚えています。彼女ともう直接話をしたい…彼女は…僕の母を知っている」
「銃を向ける前に話し合いたいというのね。やめておきなさい、玄街ヴィザーツはそう甘くないわ」
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