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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」34 抱えていた疑問

「マイヨール先生、ヴィザーツとは何なのでしょうか。
僕はレポートにはアナザーアメリカの守護者と書きましたが…それは、主にここに来る前のアナザーアメリカンとしての見方でしかありません。
レポートを提出したあと、僕は…ヴィザーツが何者なのか、分からなくなりました。ガーランドに来て…いろいろありすぎて…」
彼は女教師の本と種類だらけの机に視線を落とした。
マイヨールは彼を窓際の椅子に引っぱっていき、本棚に隠してあったワインクーラーの瓶を取り出した。
「あなた…混乱して疲れているのね。
何がこんがらがっているのか、一緒に整理するのはどうかしら。迷惑でなければ、付き合うわ」
彼女はオルシニバレ領国の自宅から持ってきたグラスをカレナードに持たせた。
「気付けにどうぞ。
ここから先、私は教師ではなく、あなたの話を聞きたがっているただのヴィザーツ。
先生ではなく、マダム・マイヨールと呼んでちょうだい。
アナザーアメリカンであり、ヴィザーツの卵であるカレナード・レブラントの話が聞きたいわ」
カレナードは渡されたグラスから一口飲んだ。シェドナン奨学生試験の日に広場で飲んだ熱いワインの味を思い出した。
「先生…、いえ、マダム・マイヨール。
少し長い話になりますが、よろしいですか。
それから、情報部副長に口外しないと宣誓したことを話しますが、どうか胸にしまっておいてもらえますか」
マイヨールは自分の椅子をカレナードの正面に置いた。
「約束するわ」
それから30分、マイヨールは紋章人の混乱を解きほぐす糸口を手繰っていた。
「あなたの混乱の一つはヴィザーツが調停を取り持ってアナザーアメリカに軍事衝突がないにもかかわらず、ヴィザーツは軍人でありガーランドは軍事力そのものであること。
これは何のためかという疑問。
そうよね、アナザーアメリカンのあなたから見ると、大いなる矛盾と解釈するのも無理はないわ。
オリガ・ヨセンタことミーナ・クミホはここをスズメバチの巣に例えたくらいですものね。
結論から言いましょう。
ガーランドの武力はアナザーアメリカンに対して無意識の抑止力となり、玄街に対しては実際の軍事力として行使するためにあるのです」
「無意識の抑止力…」
「ガーランドが飛ぶだけで、アナザーアメリカンは戦争の歴史をほとんど持たずに来たのです。それはなぜ」
カレナードは問いに答えられなかった。マイヨールは頷いた。
「人々はこの船によって、創生の姿を無意識に思い出すからよ。
アナザーアメリカの始まり、悲惨な混沌の記憶だわ。何十年もの間、生まれた子供は死に続け、絶望的な日々が人々を徹底的に傷めつけた記憶です。
誰もが最後の人類の1人になることを恐れたの。
ガーランドは有史以来のその記憶と直結しているのです」
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