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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」32 通じない孤独

「承知いたしました。どうかお心を落ち着けてくださいませ。
このジーナ、もしマリラさまが彼を消し去れとお命じになれば、いくらでも手を汚しましょう」
マリラはやっと上半身を起こし、涙を拭った。
「まるで嵐だ…私の中に爆発のような嵐が起こる…。分からないとは、恐ろしいことだ…。私は自分が恐ろしい…」
彼女はしばらく壁を見詰めたのち、私人から女王に戻ってため息をついた。
「ジーナ、矛盾していることを言うが、カレナードの命を奪ってはならぬ。あれはなんとしても生かしておいておくれ。
あれを紋章人にしたのは私だ。女王マリラ・ヴォーはあれの生命に責任がある。
だから…先ほどのは…ただの私人、マリラの暴言だ。私はどうかしていた。本当にどうかしていた…」
ジーナは膝まずいて、マリラにハンカチを渡した。
「落ち着かれましたか、マリラさま。ようございました」
「すまない…女官長を驚かせてしまったようだ…」
マリラはかろうじて微笑んだ。
ジーナは女王に仕えて初めて私人マリラの最も弱い姿に接していた。だが、女官長はそれを知らなかった。彼女はマリラが女王と私人の記憶を分けて持つことに何の疑いも持っていなかった。
トペンプーラはマリラが去ったあとの執務室で黒子を突いていた。
「……ワタクシ、やってしまったようデス」
彼はかたわらのカレナードが深刻に立ちつくしているのに気が付いた。
「レブラント君、もしかして、さっきのアレが君のイメージの元になった恐ろしい女王なの」
「あれは、ほんの序の口で…いえ、どうか忘れてください」
「構いませんヨ。
情報部副長はこんな喋り方ですケド、中身はそうじゃないです。口は固いですヨ」
「言えません。女王の名誉にかかわります」
「それで十分、詳細は女官達から聞きます。
ところで君、情報部で雇いたいわネ。もっとも女王付き独立遊撃隊候補生の辞令を出そうかって話もあるのヨ。まァ、形式的なことでしょうけど」
「何ですか、それ。これ以上課題が増えると落第しそうです」
「君のガーランドでの立場を補強するためです。女官長があなたのために女王と艦長に提案したそうです」
「ジーナさんが…」
「気にかけてもらっている証拠です。重荷にしなくていいから、ありがたく受け取っておきなさいネ。
どしたの、浮かない顔ですネ」
「僕のどこにマリラさまに通じる素養があるのですか。
僕はそれほどヴィザーツのこともガーランドのことも…アナザーアメリカのことも…分かってない。ましてや女王のことも…」
「そうかもしれませんけどネ」
トペンプーラは人差し指でカレナードの額を弾いた。
「まだアナタが気づいてないだけデス。
それは仕方ありません、なんたって頭の中で整理も出来てなけりゃ心で納得もしてませんからね。
でも、ワタクシには分かります。おそらく魂という深いレベルに、素養を持っている。いまは無意識でも、そのうちに明らかになりますヨ。
ワタクシの眼はふしあなじゃないワッ」
確信に満ちている情報部副長だったが、当の本人は戸惑うばかりだった。
「あなたの言うことは…謎です…」
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