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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」31 かろうじて手綱の内に

ジーナは急いであとを追った。女王は寝室に入るとベッドに突っ伏した。
「私は…なぜ、こんなにも乱れたのだ。トペンプーラの言葉の何が私をこうさせるのだ。
分からぬ。私人としての記憶さえあれば…記憶があれば、このありさまに、腑に落ちる答えを見いだせるであろうに。
ああ、これは怒りなのか、憎しみなのか。
私はもう少しで女王にあるまじき行いをするところだった。
あの2人…いや、カレナード・レブラントを傷めつけずにはいられない衝動があった。…ジーナ!ジーナ!」
自分を呼ぶ女王の声で、女官長はマリラが再び二の月のような懊悩に苦しんでいるのが分かった。
「マリラさま、暖かい飲み物を持ってまいります。今夜はもうお休みくださいませ」
ジーナはマリラの手を取り、寄り添った。
「ジーナよ、そなたから見て、今の私は生き脱ぎの前の私が踏んだ轍を、もう一度踏もうとしているのか。どうなのだ。
私はなぜ紋章人に辛く当たるのか、自分でも分からぬ。さっきはトペンプーラがいた。だから、かろうじて彼らの前から逃れられた。
ジーナ、そなたはずっと生き脱ぎ前の私のそばにいた。見当はつかぬか」
ベッドに横わったままのマリラに女官長は言った。
「私にははかりかねることでございます。しかし、マリラさま、次の生き脱ぎまでに時間はございます。今は分からないことも、いずれ明らかになりましょう」
「それまで、果たしてカレナードの命を奪わずにいられるだろうか…」
ジーナはギョッとした。それほどまでにマリラが紋章人に対し、激しい感情を抱いているとは思わなかった。
「マリラさま…それは…それはどういう意味です」
「私はオリガ・ヨセンタが投身した理由が分かる。
彼女は怖かったのだよ。ガーランドからも自身の任務からも逃げることが出来ず、遂行未遂の恐怖だけが彼女を突き動かしたのだ。
だから彼女は弾が最後の1発になった時に死ぬつもりでいたのだ…私かカレナードを道連れにしたかったが、それさえ出来なくて、カレナードにはカレワランの呪いをかけ、私には拒絶と恨みの眼を投げてよこした。
そして、自分が生き残ることを捨てて、我々の前から消えた…」
「マリラさま…。そのような…」
「オリガと同じだ…私が逃げるか彼を亡き者にするか、どちらかが消えなければならない恐怖に襲われたのだ。
トペンプーラの何かが引き金になり、私はそういう事態になった。
さっきはカレナードから逃げることで、なんとか面目を保ったのだ。
だが、これから先は分からぬ。
この怒りとも…憎しみとも…はっきりせぬものの正体を押さえぬ限り、彼を私の前に連れて来てはならぬ」
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