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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」30 マリラ豹変

ベルは言った。
「本の修復コードに癖があってね、気付いたのはエーリフ艦長。彼の趣味はロマン小説なの。
ジーナ女官長も協力して、そのコードが張り付いている本を全部調べたの。ガーランド・ヴィザーツにはないコード配列だったそうよ、修復して半年経つと効力が切れて本が傷むの。
…カレナード、オリガのことで辛いならあとで話を聞くわよ」
「大丈夫です、ベル・チャンダル。僕は…僕はV班に戻って早くレポートとコード理論の補習をやらなくては」
「そうね、それがいいわ。今夜にでも友人の所へお戻りなさい」
マリラの執務室へ行くと、トペンプーラが「お疲れさん」と肩を叩いた。
「女王と君が鉢合わせしないよう、パレードのあとはずっと眠っていてもらう予定だったのにネ。ワタクシの手落ちデス。睡眠薬が足りなかったようで、申し訳ない」
「僕に一服盛ったのですね。言ってくれたら部屋で大人しくレポートを書いていたのに」
「次からはそうしましょう。
しかし、君が大人しくしている可能性は低いとみました。女王の危機となれば刺客の前に身を晒し、女官長の部屋で武器を漁る。やる時はやる人のようですからネ」
「トペンプーラ!」
マリラは叱った。
「情報部副長には言っておく。次はないぞ。二度とカレナードを私の代役にするな」
「おやおや、お気に召さなかったのですか。マリラさま」
「私に断りなく紋章人の命を危険に晒し、素人も同然の訓練生に情報部員の仕事を強要するとは、リスクが高すぎる。
確かに紋章人はやってのけたようだな。
パレードの席で堂々とネブラスカ領国府の主要陣と渡り合うとは大したものだ。だが、これは結果論だ。ことがうまく運んだから、今こうしていられるのだぞ」
トぺプーラは私見を述べた。
「もちろんです。ワタクシは紋章人に会った瞬間、マリラさまに通じる素養を彼に強く感じましたので、特別なイメージ変容のレッスンを施しました。彼は見事に…」
そこまで言って、彼は女王の異変に気付いた。マリラは表情を失い、常に美しい仕草を奏でる両腕が重く垂れた。
カレナードは思い出したくもないガーランド乗船の日のマリラが現れるのを見た。再び起こりうる悪夢が確実のものとなった。
マリラは冷たい怒りを声に含み、トペンプーラの言葉を継いだ。
「私に通じる素養を感じたので、どうしたのだ。申してみよ、トペンプーラ」
そばにいたジーナは情報部の男が地雷を踏んだと思った。
彼は持ちこたえようとした。
「ワタクシ、余計な事を申しました。紋章人はこのまま連れ帰ります。明日また報告に参りましょう。失礼をお許しください、マリラさま」
トペンプーラは畏まった。カレナードもそれに続いた。
マリラは沈黙したままだったが、内側では突然の怒りが荒れ狂っていた。彼女は自分でも何が気に障ったのか、はかりかねた。そのために感情は麻縄の如く乱れ、それ以上トペンプーラとカレナードの目の前にいることは出来なかった。
「2人とも下がれ。紋章人は眉が元通りになるまで私の前に現れてはならぬ」
彼女は一瞥もくれずに執務室を出て行った。
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