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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」11 馴染み初めの初音かな

赤い髪の少女は暗闇に慣れているのか、寝床の中で動いたようだった。
「マヤルカでいいわ、お母さまが呼んでたようにマヤルカがいい。どこから来たの。カレナード」
「西のミセンキッタ領国から山を越えて」
「あなた、出資寮に入るって本当?」
「うん、そこで勉強して二週間したらここに勤めるんだ」
「それなら私と遊んでね。一緒に玉蹴りしたり、お花集めたりするの」
「フロリヤさんはしないの」
「お姉さまは学校に行ってて忙しいの。帰ってきても家令と帳簿つけたりして大人の真似事してるわ。ねぇ、あなた、うちに住めたらいいのに」
「うん。ここはとても素敵なおうちだ。でも僕は出資寮に行かなくちゃ」
「あなたのお父さんとお母さんはどうしたの」
「天に行った。母さんはずっと前に。父さんは3日前の朝早くに」
「私のお母さまも天に行ったの。眠ってるとおもったけど違うの。お母さまの手は冷たかったのよ」
カレナードは少女の方へ手を伸ばした。
「僕の父さんも同じだった。でも、僕の手は暖かいはずだ」
マヤルカは少年と手を繋いだ。そしてほうっと息を吐いた。
「私、もう一度だけお母さまとこうやって眠りたかったわ」
子供達はとりとめのない話を続けるうちに寝入った。
添い伏しは型通りに行われなかったが、マヤルカは回復に向かい始めた。
彼女のためにカレナードはその後も何度も添い伏しを勤めた。彼にとってシェナンディ家は暖かい食事と暖かい寝床、マヤルカと過ごす子供らしい時間が待つ場所でもあった。
春が終わるまでにマヤルカはすっかり元気になった。初夏以降、カレナードにとってシェナンディ家は本格的にもう一つの家になった。
彼は午前中に出資寮で基本的学課を済ませた。すでに多少の読み書きと計算を父に教えられていたが、学課を始めると彼の才能は飛躍的に伸びる気配だった。昼食から夕刻までをシェナンディ家で過ごした。その間、組合のメッセンジャーボーイや工場の雑用、合間でマヤルカの遊び相手になった。
夕食前に寮に戻り、当番や片付けや寮生たちとの喧嘩とふざけ合いでまたたく間に夜になる。何かと騒がしい出資寮の夕刻が過ぎると、カレナードは就寝前に必ず手元に残してもらった父の写真を掲げ、フロリヤに教えてもらった短い祈りの言葉を唱えた。
「青い夜と魂が安らぐ闇は繋がるべし、精霊の御力で」
そのあとはマリラの姿を思い描いた。腰まで届く美しい髪、厳しい光をたたえた眼、握り返された手の感触。それらを大事に抱いて眠りについた。
「マリラさま、もう一度会えますか。いつの日か、僕は…ガーランドに…乗りたい…」
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