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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」28 散るや此花

カレナードは奥底にしまい込んでいた疑問を口にした。
「ならば、なぜグウィネスは僕の体に忌まわしいコードをかけたのです。わざわざカレワランの息子を狙ってすることですか」
オリガは今度は嘲笑った。
「そうだったわね。女男になっていたのよねえ。
カレワランは悲しむでしょうね。息子が女の服を着て、身代わりを務めているんだもの。滑稽よ、道化と同じよ。
ここにいるヴィザーツもよ、守る価値のない女王と支配体制を守っているんだもの」
ヤッカが進み出て、話は終わりにしろと制した。
「オリガ・ヨセンタは警備隊で預かる。情報部はしっかり取り調べに来るといい。レブラント、個人的な話はあとにしろ。ピード、オリガ・ヨセンタに目隠しだ」
オリガは再び取り乱した。
「嫌よ、目隠しはやめて。ガーランドが玄街を生かしておくつもりはないわ。目隠ししたら殺すんでしょう」
ピードは彼女の鼻先で鋭く指を鳴らした。
「大人しくしろ。
お前が持っている玄街コードの情報で、何人ものガーランド・ヴィザーツとアナザーアメリカンを救えるかもしれないんだ。殺すわけないだろ」
「分かったわ。でも、少し待って」
オリガは立ち上がり、マリラを見た。マリラも無言で彼女を見た。2人の視線は宙で絡んだ。決して相容れない者同士の短い対話だった。
次の瞬間、道化の手を振り払い、ベランダの手摺りに身を滑らすようにして、オリガは下の庭園へ身を投げた。掴もうと伸ばした道化の手の中に、オリガの片方の靴だけが残った。
トペンプーラは「しまった!」と叫んだが、全ては遅かった。
ヤッカ達は階段を駆け下り、女官達はベランダから下を覗き込んだ。
手錠をかけられたままのオリガの無残な死が見えた。彼女の体は数分の間、痙攣していた。警備隊と医療コードの心得のある者が蘇生を試みたが、無駄だった。
カレナードはベランダの端から見ていた。後ろから誰かの手が彼の視界を閉じた。マリラだった。
「もう十分見ただろう。…泣いているな、カレナード。彼女を悼むのか」
「それもあります。ミーナさんは図書館でよく本を探してくれたのです。…でも、それだけではありません…」
「カレナード、こちらを向きなさい」
彼はかぶりを振った。
「本物の女王に、偽物は顔を見せられません」
「まるで自分を見ているかのようだった。不思議な光景だったぞ、カレナード。
そなたの母はカレワラン・マルゥというのか…。その名はどこかで聞いた覚えがある。昔、どこでだったか…すぐには思い出せぬが」
マリラはカレナードの肩に手を置き、影武者の任務は終わりだと告げた。
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