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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」27 玄街のオリガ・ヨセンタ

ピードはミーナの両手を後ろに回し、手錠をかけた。ヤッカとトペンプーラ達がベランダに上がって来た。そのあとからマリラと女官達が続いた。
トペンプーラはミーナに言った。
「まず、あなたの本名を伺いましょう。ミーナ・クミホと呼ばれるのには、もう飽きたでしょ」
切り揃えた黒髪がゆっくり持ち上がり、本来の彼女に戻っていった。しっかりした眼だが、疲れ切っていた。
「…そうね、殺される前にお前達に名を覚えてもらいたいわ。あたしはオリガ。オリガ・ヨセンタ」
「オリガさん、ガーランドの法で裁く事はあっても、私刑であなたを殺したりはしません。聞きたいことが山ほどありますからネ。
本物のミーナはどこにいるのです。彼女はミルタ連合領国からミセンキッタのテネ城市に向かう途中だったのでしょう。彼女と入れ替わりましたよネ」
「あたしはミーナを殺してなんかないわ。
彼女は川で溺れたのよ。ヴィザーツらしく飛行艇に乗っていれば良かったのに。馬で駆けていて雪融け水で増水した川に滑り落ちたわ」
「それであなたは彼女の代わりにテネのヴィザーツ屋敷に潜り込めたというわけネ。
あそこは居心地良かったたでしょ、いろいろ大まかで緩くって誰もあなたがスパイとは気付かない」
「…そうよ、ミルタ連合の辺鄙から来た地味な小娘があたしにはぴったりだった。
なのに、テネの屋敷から辞令が出て急にガーランドで働くことになって…恐ろしかったわ…こんな気持ちの悪い所で暮らすことになって…」
トペンプーラは苦笑した。
「ほほう、興味深いです。どの辺が気持ち悪いの、ミス・オリガ」
「ここはまるでスズメバチの巣よ。女王を頂きにして、調停の名のもとにアナザーアメリカンを見張って、時には刺しに来るわ」
トペンプーラはミーナ・クミホを誘拐して入れ替わる予定だったのかと訊いた。
「そうよ…彼女は最初から殺す計画ではなかったわ。可哀そうに、岸に流れ着いた時にはもう息が絶えていた…」
「ふうん、助かっていたらミーナは玄街に誘拐されて可哀そうなことになったわけですよネ。違うかしら」
オリガは黙っていたが、視線を感じたのか、カレナードを見返した。
「あたしからも尋ねたいことがあるわ。
影武者さん、確か新参訓練生のレブラントよね。お前はカレワランという名を知っているの」
カレナードが返事する前に、ワイズ・フールが遮った。
「紋章人、相手にするのは止めなさい。この女はあなたにロクでもない毒を含ませるやもしれません。小生、悪い事はお勧めしません」
カレナードは道化の忠告に従わなかった。
「カレワランは僕の母です。フルネームはカレワラン・マルゥ…」
オリガは声を立てて笑った。
「アハハハ。他人の空似かと思ったけど、やっぱりそうだったの。カレワランはどうしているの」
「母は僕が子供の頃に亡くなりました。本当に母は…玄街のヴィザーツだったのですか…」
「認めたくないでしょうねぇ。
でも、彼女はグウィネスの片腕だったのよ。そして、あたしの先生でもあったわ。素晴らしいコードの教師だった。」
道化が予測したとおり、ロクでもない毒がカレナードの心に浸みていった。
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