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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」23 女王代役、出陣す

飛行艇の中でカレナードはドレスの上から防弾よけの儀礼用マントと例のヘッドドレスを付けられた。侍従に扮したトペンプーラが仕上げを見守った。
「では、マリラさま。随行の情報部員をここに呼びますぞ」
カレナードは「頼む」とマリラの声で言った。10名の情報部員が後方の部屋から現れた。彼らは警備隊とよく似た制服に身を包んでいたが、帽子と腕章の色が違っていた。
偽のマリラは彼らに声をかけた。
「本日は特別な任務を負っているであろう。そなた達の働きをこの目で見せてもらうぞ」
情報部員達は敬礼をした。彼らはマリラの正体を知らされているようで、敬礼と同時に含みのある笑顔を返してきた。カレナードは、ゆっくりと彼らに頷いてみせた。
パレードは午後1時半に始まった。
ガーランドからの一行は観覧席の途中に設けられた特別席に落ち着いていた。女王の隣には、ブルネスカ領国府の首長とポルトバスク市長に調停準備会の代表が同席して、パレードの山車について説明したり、領国内外の話題を提供したりと忙しかった。
カレナードは4日間で仕入れた情報を元に、マリラとして返事をし、質問をした。
女王のうしろでアライアとベルとトペンプーラの腹心達が耳を澄ませていた。そこでの会話を、ガーランドに戻ったのち記録するためである。
カレナードはそれを知っていたので、女王の威光を利用して際どい質問を首長にぶつけていた。
「ブルネスカの領国民は、この地の強風に負けぬ逞しさがある。玄街のもたらす災いにも負けてはいないであろう。先年の誘拐事件の被害者は元気でいるのか」
首長は作り笑いもせずに言った。
「そこにいる調停準備会の氏が詳しいでしょう。当の被害者の親類なのです」
話の矛先が向けられた男は、無礼にならない程度に不機嫌な色になった。偽マリラは気遣ってみせた。 
「大いなる災難であったな。生命と財産の両方が脅かされたのだから。さらわれたのはそなたの姪御なのか」
初老の男は和らいだ様子で答えた。
「女王さまにお気遣いいただき、私の心も慰められます。姪ではなく、嫁いだ娘の孫でございます。外孫とはいえ恐ろしい目に遭ったことが不憫でなりませんでした。幸いにして元気にしております」
「何歳になるのだ。夕暮れになると泣いたりはせぬか」
「8歳でございます。孫はしゃんとしたブルネスカ魂を持っております」
「それは上々であるな。孫娘の両親も安心したであろう」
「仰せのとおりで。今は傾いた財の立て直しに精を出しております」
「さすがはブルネスカの民よ。奪われた財の話は快くはないだろうが、ついでのこととして、少々聞かせておくれ」
このような調子でカレナードは玄街ヴィザーツとの接触のあとを聞き出した。
侍従に扮したトペンプーラは予想以上の出来だとほくそ笑みながらも、油断してなかった。いずれ玄街の銃口が向けられるだろうと、予感していた。
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