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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」21 マルゴ・アングレーの煙草

ガーランドはブルネスカの三つの川の合流点上空に停泊していた。
男子V班は調停開始式の慌ただしさを利用して、情報部区画に近づこうとしたが、まったく徒労に終わっていた。マヤルカは憤慨した。
「私だって疑われてもいいはずよ。情報部に連れて行ってちょうだい」
オーレリは情報部勤務の伯父を頼ってみたが、親戚コネクションはあっさり却下された。
「ごめんなさいねえ、私が男ならもう少し入り込めたかもしれないのに」
ミンシャはそンなの関係ないわよと、肩をすくめた。彼女はふと情報部区画のエントランスにあの高慢で小柄なマルゴ・アングレーがいたのを思い出した。情報部の制服を着て、書類箱を抱えていた。
「確か、ハーリ・ソルゼニンの従姉のなんとかってミシコが言ってたわね。このさい搦め手でも何でもやってみようか、マヤちゃん」
「よろしくお願いします。ミンシャお姉さま!」
調停開始式の2日目、マリラは午前中執務室で仕事をしていた。この日は情報部と施設資材部からの報告書に目を通し、副艦長や情報部長が来室して打ち合わせをした。カレナードはマジックミラーの窓越しにマリラの発言に聞き耳を立てていた。
アンドラはガーランドに玄街のスパイが複数いることをつかんだと言った。カレナードはそれほど驚かないでいる自分に気付いた。
「やはり居るんだ…玄街間諜…。僕を拘束して、彼らを泳がせていたわけだ。一網打尽にする作戦だな」
マリラは手筈通りにしておくれと言った。
アンドラが去るとすぐにガーランドを降りるために執務室を出た。その際、マジックミラーで立ち止まり、鏡の中の自分を見た。
マリラはいつになく唇を噛んでいた。これから起こるであろう事態を心に描いているのだろう。やがて彼女は唇の端を上げた。
「避けては通れぬ道ならば、行くまでのこと」
玄街を潰す決意を新たにして、立ち去った。
その頃、マヤルカとミンシャとヤルヴィはハーリを先頭にして、マルゴのアパルトマンのドアを叩いた。ハーリは楽譜を抱えていた。
「マルゴ姉さん、北メイスのジグの書き付け譜を持って来たよ。ヤルヴィが持ってたんだ。彼も来てるから、会ってくれないかな」
中から寝起きの声が聞こえた。
「待ってて。半夜勤だったのよ」
ほどなくして彼らはマルゴの狭いアパルトマンに入った。彼女は髪を掻きあげ、ピンで留めた。ガウンを体に巻きつけていた。
「あら、女連れなの。いいわねえ」
窓を開けて、どこにでも座って頂戴と促したが、壁収納式のベンチとスツールが一つしかなく、ハーリはマルゴのベッドに腰掛けた。
マルゴは煙草に火を点け、紫煙をくゆらせて楽譜に見入った。
「それで、こんな大勢で押し掛けて何が聞きたいの。お嬢ちゃんたちまで一緒に来ちゃってさ」
ヤルヴィはカレナードが情報部でどうしているか教えて欲しいと訴えた。マルゴの答えは素っ気なかった。
「アタシのような下っ端部員には伝わって来てないわよ。この意味分かる、ヤルヴィ君」
ヤルヴィは遠まわしな言い方に戸惑った。
「カレナード・レブラントってさ、エンゾから聞いたわ。玄街コードで女になっちまったんでしょ。そんなのが情報部区画にいたら、話のネタが尽きないわ。
つまり上層部がどこかに隔離して尋問しているのか、密かに始末されたか、どっちかよ」
マヤルカは飛び上がった。
「そんなわけ、ない。今になって、そんなことが!」
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