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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」20 変容

トペンプーラは巧みに誘った。
「恥もテレもためらいも戸惑いも、全て不要。 ワタクシがあなたの中の女王を引き出して差し上げマス!さあ、行きますヨ」
彼は紋章人のヘッドドレスの中に手を差し伸べ、こめかみにぴたりと当てた。カレナードはトペンプーラの言うままに深呼吸して、目を閉じた。
2人は静かにマリラのイメージを組み直した。トペンプーラの声は魔術のようだった。
「新しい女王の姿、その内側に何がありますか」
「…底のない…黒い淵…」
カレナードのイメージのマリラは以前よりもっとどす黒い深淵のような中身を孕んでいた。トペンプーラは底なしの淵がどこまで続いているか訊いた。
「どこまでも…遠くに…サージ・ウォールの下に潜り込んで…地中の闇の底へ…」
あまりに黒いのでドレスはかえって白くなり、その裾はアナザーアメリカの端から端まで広がった。髪も真っ白で、上空3000mの航空可能域を漂ってサージ・ウォールまで届いた。巨大な円柱のように、マリラはアナザーアメリカの中心に立っていた。カレナードはそのイメージのとおりに立った。
「ふむ。そこに立つあなたは恐怖の女王にして、アナザーアメリカの守護者の心…マリラ・ヴォー。さあ、名前を繰り返してご覧なさい。マリラ・ヴォー!」
「マリラ・ヴォー」
「もっと!」
「マリラ・ヴォー!」
「あなたの名は」
「マリラ・ヴォー!」
トペンプーラは少年のこめかみから手を離し、レッスンの成果が現れるのを見守った。
今やカレナードは頭を高くして、こころもち白くなった顔が周囲を睥睨した。頬に厳しさが宿り、唇は微かに微笑んでいるものの、引き締められていた。全身から刃のような冷たさが滲んだ。 目が開いた。
トペンプーラが話しかけた。
「カレナード君」
「無礼者。私を誰と心得るか!」
いきなり怒号が飛んだ。ジーナは生唾を飲んだ。少し前まで女王のヒステリーに傷ついていた少年とはまるで違う人間が現れた。カレナードにマリラが憑依したようだった。カレナードはトペンプーラを見据えて言った。
「カレナード・レブラントはここにはおらぬ。あの者は私に器を明け渡した」
それから3時間、彼はマリラとして振る舞った。
「春生まれの人間の中には、時として大変なイメージ力を備えた者がいるものですが、やはり彼はその手の才能に溢れている。ラッキーでしたネ」
トペンプーラは休憩の茶を飲みながら、小指で黒子を突いていた。ジーナはほっとしていた。
「あの調子でパレードを乗り切って欲しいですわ。
あと2日ありますもの、手違えさえ起こさなければ、計画通りです」
「うまく玄街さんが乗ってくれるでしょう。レブラント君はどうしてますか」
「ポルトバスクの要人リストを暗記中ですわ。彼はブルネスカ領国の新聞と今回の調停に関する資料に目を通すと言って。今、ベルが持って行きましたわ。
ああ、もうマリラさまがお帰りになる時刻です」
「彼はいろいろと目覚めたようで、なにより。では、また明日ですネ。くれぐれも女王には悟られないようよろしくネ」
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