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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」19 女王の力は悪

カレナードは新たな課題に取り組まねばならなかった。トペンプーラはイメージ構築のレッスンを始めた。
「君が持っているマリラさまのイメージを聞かせてくださいネ。このさい女官長に遠慮は要りません。包み隠さずに言いなさい」
カレナードは一瞬躊躇ったが、端的にマリラのイメージを述べた。
「恐ろしい方です」
「なるほど。その他もあるでしょ」
「恐ろしくて、孤独な方です。そして、厳しく偉大な……常人離れした器の人です」
そこで彼はマリラの他の顔も思い出した。大宮殿でウーヴァの波動の盾となったマリラ。艦砲射撃の前に見せた気さくな教官のようなマリラ。
「優しさも慈しむ心も…お持ちです」
「待ちなさい。それは君のイメージじゃない。君が体験した事実だ。重要なのはネ、君の想像力の方なの」
トペンプーラは唇に人差し指を当てて、しばらく考えたあとで言った。
「なるほど。君の女王のイメージはそれでいきましょう。基本は器の大きな恐ろしい女でいいのです。そこに一つの要素を加えればいい」
ジーナは「そんな単純なことでいいのですか」と言ったが、トペンプーラは微笑んだ。
「そうです。ことは単純。レブラント嬢、なぜ女王は大器で孤独で恐ろしいのでしょう」
カレナードは目を閉じていたが、やがて静かに言った。
「アナザーアメリカで唯一人、生き脱ぎをする方だからです。アナザーアメリカとガーランドのために生き続けなければならない方ですから」
「それが理由ですか。理由の元は他にあるでしょ。ほらほら白状なさい」
「あの、ジーナさん、申し訳ありません」
ジーナは「謝ることはないのよ」と促した。
「僕は」と言いかけて、トペンプーラの視線に「私は」と直した。
「私は、マリラさまの嵐のような暴力が忘れられません…。あの方の怒りが、恐ろしくてならないのです」
「女王はあなたにだけは特別な姿を見せるのですヨ。ね、ジーナさん」
女官長は「紋章人ですからね」と返した。
「よろしい。女王は、すなわち王とは恐ろしい存在です。マリラさまはヴィザーツを統べるべく力をふるう一方、あなたには怒りをぶつけたわけですネ。
レブラント嬢、王の力とは基本的に恐怖と悪なのですよ。しかし、アナザーアメリカンがわざわざ用意したパレードでそれを見せることはありません。ねぎらえば良いのです、そして内側には恐ろしさを湛えていなさい。相手はそれを威厳として認めます」
「女王の力は悪…」
情報部副長は続けた。
「ふふふ、マリラさまの手足であるワタクシは悪党を自覚していますヨ。
ガーランドはアナザーアメリカにとって空から降ろされる碇のようなもの。調停準備会の作法を守らないアナザーアメリカンを、ガーランドは許さないという姿勢を見せるのです。彼らをねぎらいながらネ。
さ、偉そうに胸を張るのです。マリラさまの恐ろしさをあなたのものになさい」
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