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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」10 第2の令嬢マヤルカ

階上から医師と祈祷師が降りてきて、シェナンディにマヤルカに添い伏しの治療を申し出た。祈祷師がふとカレナードを見た。
彼は「ほう!」と声を上げた。「良さそうな子ではないか」と言った。彼は驚いて目を丸くした少年の首筋にふれて脈を取った。
「よしよし、怖がるな。深呼吸していておくれ」
医師もシェナンディも「小さすぎる」と言ったが、こればかりは祈祷師の言葉が優位だった。
添い伏しとは、オルシニバレ南部地方の民間療法で、ひどく気力を失った病人に対し元気のある者を横に寝かせて気力を移すというものだ。ただし、相性を問題とするので、弱り込んだ人間に精力的な添い伏しを持ってきてもあまり良くないという具合に、繊細なさじ加減が要った。
祈祷師はマヤルカの状態には、この少年の気がぴったりと診て取った。シェナンディはカレナードの背中をぽんと押した。
「早速オルシニバレでの初仕事だな」
それからメイドに支度を命じて風呂に入れさせ、爪を切ったり髪を少々切ったりして小ざっぱりと整えた。
台所では添い伏し前の食事を特別に用意させるなど、祈祷師は念を入れた。
カレナードは大人の話で事情を飲み込んだが、自分で確かめたがった。
「マヤルカさんは病気なの」
祈祷師は言い聞かせるように話した。
「5ヶ月前にここの奥様が亡くなってな、それから下のお嬢さんがすっかり気落ちしてしまった。今では萎びた花になっておる。
3つ上のフロリヤお嬢さんは気丈でおられるから気を紛らわす術をあれこれお持ちだが、マヤルカはお前さんより1つ小さい。
お前さんは元気いっぱいというところより少しくたびれておる。そこが良いのだ。
加えてその気性、大胆で繊細、優しいが強情、私の見立てではお嬢さんによく合うぞ」
カレナードは自分の気性のことなど考えたこともなかったが、すっかりきれいにしてもらい、美味しい食事をいただき、気分が良かった。これから頑張れそうだと自然に思えるのが嬉しかった。
彼は清潔な寝間着姿になって、祈祷師とともに階上へ上がった。
フロリヤが階段のうえにいた。
「妹をお願いね」とその顔が言っていた。
マヤルカは姉よりも赤い髪をしていた。頬に生気がなく、電燈の下でも恐ろしいほど青白い皮膚をしていた。
2つ並べた寝床に横たわり、ロウソクが灯された。祈祷師が注意した。
「眠るまで決して口を開いてはならんぞ」
寝床の間に陣取った彼は、子供達の手を取ってゆっくり脈を測った。
「よしよし、子供達よ。気を通じさせてやるから目をつむっておいで」
うねるような詠唱が続き、その間にお香が効いて患者と治療者は眠ったようだった。
灯されたロウソクが次第に消えて静かな暗闇だけになると、祈祷師は二人の寝息を確かめて出ていった。3分後、マヤルカが話しかけた。
「ねぇ、起きてるの。カレナード・レ…」
「レブラントです、マヤルカお嬢さん」
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