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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」16 大講義室で逮捕

カレナードはレポートとコード補習の件で頭がいっぱいになっていた。
「まだ2ヶ月も先じゃないか。僕より踊れる人がいるだろう。だいたい夏至祭の踊り比べのことは何も知らないんだ」
「2ヶ月もあれば十分さ。15曲の踊りくらいすぐに覚えるさ。今年の新参はダンスに関しては本当にとことん不作なんだよ」
「結論を出すには早いよ。ダンス・パーティに来てなかった奴だっているんだよ、キリアンみたいに」
「そうはいっても、お前を第一候補にしておくぞ。忘れるなよ」
大講義室に入っても、ミシコは懸命に次のレポートのテーマを探していた。
「カレナード、君はどう考えているんだ」
「僕が書けて君が書けないのは、アナザーアメリカンだけが知っていることだ。つまり…オルシニバレのアナザーアメリカンの…コードの無い生活や…制度の中にあるものだ」
「僕は逆だな。ヴィザーツ屋敷だけの何かだ。何だろうな。当たり前すぎて見つからない。当たり前のこと…」
「その当たり前のことが、僕から見ると凄い世界なんだよ、ミシコ」
話している最中だった。トペンプーラが警備兵を2人連れて大講義室に現れた。めったにないこととあって、彼は注目の的となった。トペンプーラの足取りは緊急事態のそれだった。
彼はカレナードのところまで真っ直ぐ来て、1枚の書状を読み上げた。
『訓練生カレナード・レブラント。玄街間諜の疑いにより、身柄を一時拘束する。情報部長ケペル・アンドラ』
「先日、ボンゾ教官の訓練中に合いましたネ。私は情報部副長のトペンプーラです。一緒に来るのデス」
カレナードは頭が真っ白になった。青天の霹靂だった。今頃になって玄街のスパイに疑われるとは考えられなかった。
先に抗議したのはミシコだった。
「待って下さい。彼が一体何をしたっていうんです。玄街のために苦しんでいるのは彼の方なのに」
カレナードはショックを抜け出し、目の前の高官に身の潔白を述べようとした。だが、それより早く警備兵が彼の両腕をつかんだ。持っていた紙挟みが床に落ちた。
「待って下さい。僕は玄街じゃない。ただの訓練生です。まだレポートがあるし、コードの補習に出なくちゃならないし、締切が」
トペンプーラは書状を丸めて、カレナードの鼻先でピシリと振った。
「何を寝ぼけたこと言っていますか。君は締切より自分の身を心配なさい。いいですか。今日から少なくとも1週間は訓練生棟へ帰れません。情報部で徹底的に取り調べますからネ」
「乗船したときに艦長に事情聴取してもらいました。それでは駄目なのですか」
カレナードは抵抗する間もなく警備兵に手錠をかけられた。冷たい感触がひどく気持ち悪く、うろたえた。
「待って下さい、僕は…ヤッカ隊長にも…」
トペンプーラはミシコにカレナードの紙挟みを拾って渡した。
「班長さん、しばらく彼を預かりますヨ。大丈夫、拷問にかけたりしないから。差し入れは許可しません」
ミシコは突然の出来事になす術もなく、連行されていくカレナードの名を呼ぶしか出来なかった。
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