挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

125/388

第4章「春の嵐」14 ポルトバスク市

エア・シャワーの順番待ちで、後ろにT班が来た。キリアンはハーリに図書館司書は元気だったかと訊いた。彼は首を縦に振った。キリアンは冗談を言った。
「君も本を借りっ放しなのか」
「違うさ。ミーナさんから言伝を頼まれたんだ」
シャルが横から突っ込んだ。
「ハーリ君は恋人達の橋渡しをやるのかい」
「相手は女の人だから違うよ」 
「おやおや、ハーリは常識人だね。単純じゃない恋もあるって知ってるかい」
ミシコが早くもオールインワンを外しながら、加わった。
「シャルに言わせるとなんでも複雑怪奇になるからな。ハーリ、まじめに聞かなくていいよ。彼の基準からしたら僕なんか単純明快で話にもならないのさ」
キリアンがその通りだと相槌を打った。ミシコは腐る様子もなく言った。
「キリアン、君はダンス・パーティに来なかったろう。チャンスを棒に振りやがって」
「ミシコ、僕が酔っ払いの面倒を見てたから、君はミンシャといちゃついていられたんだぞ」
「うらやましいだろ」
ミシコはお前も早く相手を見つけろと言わんばかりだったが、キリアンはその手に乗らなかった。シャルはミーナの伝言の相手についてあれこれと探りを入れたが、ハーリは口止めされているらしく、適当にはぐらかしていた。シャワー室に入りながらシャルは愚痴った。
「つまんねえ」
ヤルヴィはシャルこそ早く女の子とつき合うべきと、ララとルルを薦めた。唯美主義者はそれを一蹴し、オレ様の審美眼に適うのはマリラさまくらいじゃないと駄目だ、と口を滑らせた。その瞬間、キリアンはカレナードが目を伏せるのを見た。彼の心にマリラの存在が大きく食い込んでいるのを確信し、キリアンの胸はなぜか騒いだ。
ジーナ・ロロブリダの言葉通り、マリラは調停開始式と玄街の情報を整理するために忙しかった。
ポルトバスク市は三つの川の合流点に近く、春先の雪解けの洪水に備えた見事な護岸建築が並んでいた。だが、式場は旧市街の巨大鉄骨駅舎に大改築を施した美術館だった。2ヶ月前に竣工したばかりで、要するに開館に箔をつけたい領国府の作戦だった。
ヤッカ隊長はトール・スピリッツで下見をし、さらに私服で市内を歩き、警備隊の増員を決めた。旧市街はあまりにも込み入っており、玄街にとって有利な地域だった。
ヤッカは先日からの極秘内部調査が進むにつれ、次第に明らかになる事実に苦味を覚えながら、仕事をこなしていた。警備隊は特別配備を敷き、指揮は情報部長が取ると艦長が決めた。調停開始式の前日になってもガーランド内部に潜り込んだ玄街の手先を泳がせたままで、今頃はヨデラハンとその配下、さらにトペンプーラと部下達が包囲網を縮めているだろうと気を引き締めた。
「よりにもよって外患内憂とはこのことだ。乗り切らねば」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ