挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

123/388

第4章「春の嵐」12 酔っ払いは銃撃戦の夢を見るか

ヤルヴィがあきれていた。
「ボックスからよく見えるよ、カレナード。明日は起き上がれないかもね。ぶっ通しで踊ってたんだもの」
ミシコはその辺にあった飲み物を適当に取ってカレナードに渡した。ミンシャが止める暇もなく彼は飲みほした。
「あー、飲ンじゃった。そのグラスはキツイお酒よ。大丈夫、カレナード」
「ふふふ」
彼は笑っていた。立ち上がって、グラスをさらに三つ四つ空けた。ヤルヴィの手を取ってダンス・フロアに出ようとするので、ヤルヴィは大急ぎでボックスに戻ったが、なぜかカレナードも付いて来る。
「だめだ、彼は酔ってる。ミシコ、ハーリ、カレナードを止めてよ」
バンド・マスターの上級生が「不作法する奴は退場だぞ」と声をかけ、カレナードはフィドル席の段差につまずいて転んだ。ふわふわして気持ち良かったが、体がいうことを聞かなかった。
上から見下ろしている顔があった。マルゴ・アングレーが軽蔑するように彼を見ていた。カレナードの目に彼女の足元に置かれたフィドル鞄が映った。
「変だな…鞄のお尻にドアが付いてる…こんなところにドアを付けてもフィドルは入らないぞ…おかしいぞ…おかしくってたまらない、ああ、腕は動くかな」
彼は手を伸ばして、鞄の留め金を外した。
「ちょっと。アンタ、何やっているのさ」
マルゴは鞄をカレナードから離そうと軽く持ち上げた。留め金の隙間から拳銃が見えた。彼女はカレナードが見たことに気づかず、鞄を元通りにした。
カレナードはフィドルと一緒に拳銃が鞄に保管されているのがただおかしいだけで、ミシコに引きずられてボックス脇に降ろされても、気分よく笑っていた。ミンシャはカレナードの意外な一面を見たわ、と言った。
「真正の笑い上戸ね。二日酔いになってなきゃいいンだど」
カレナードは迎えに来たキリアンの肩につかまって訓練生棟まで帰った。帰り道、キリアンに抱きついてステップを踏みながら、でたらめな歌を歌った。
「フィドル鞄にー、仕込み拳銃―。誰のハァトをー、撃ち抜くのー」
「カレナード…この状態でよく踊れるよな…。おまけにヘッタクソな歌にヘンな歌詞!
おい、抱きつくなよ。俺が転んだらお前も転ぶんだぞ、分かってないだろ!…部屋に残っているんじゃなかった…くそ!」
休日の朝、多くの訓練生が朝食を逃したが、正午すぎにはレポート提出の現実に引き戻された連中が図書館へやって来た。昨夜の嵐の間、上層天蓋が少し開いていたため図書館の前は濡れた木の葉が貼りついていた。
キリアンは延滞中の本を布袋に下げていた。カレナードは服の代金であるレポート10枚を書くために、新しく資料を探しに来た。
キリアンはすっかり春らしくなった内陸の日差しの下で、友人に昨夜の記憶があるか確かめた。カレナードは言った。
「いつの間に男子棟へ帰って来たのか覚えてないんだ。僕は踊ってたはずなんだけど、知らないかい」
キリアンは何やらさっぱりしたカレナードの様子に、何も言うまいと思った。
昨夜、酔っ払った彼はV班の部屋に帰りつくや、陽気に服を脱ぎ散らかした。明らかにタガが外れていた。キリアンは慌てて友人に寝間着を着せたが、コルセットで包まれていない胸にたっぷり触ることになってしまい、1人で赤くなったり青くなったりしながらどうにか寝かしつけたのだった。
「これ以上は言えない。昨夜のことを聞かせて、彼を落ち込ませることはないんだ。」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ