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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」9 最初の令嬢フロリヤ

オルシニバレ市内は活気に満ちていた。
20区からなる領国の首都の空に、6区のヴィザーツ屋敷に出入りする飛行艇があった。
1区の領国府の隣には、領国で一番大きい公会堂があり、道幅30mのバレイ大通りが2.2kmに渡り伸びていた。
シェナンディ家は17区にあり、大きな木造の家にこの地方独特の木彫り装飾がふんだんに取り入れてあった。
1階は事務室・会議室・サロン・食堂などがあり、別棟が工場と倉庫で、普及し始めた自動車のためのガレージを増築中だった。
カレナードはサロンの隣の従業員用休憩室で家の当主を待った。
人事担当の事務室長は言った。
「あらかたの事情は鉱山の親方から聞いた。トランクの中のレンブラント氏の全財産のほとんどは領庫に送られ、君は出資寮に身を寄せることになるだろうな」
正午を過ぎてもシェナンディ氏は帰宅しなかった。
昼休みが終わり従業員もほとんど居なくなり、部屋は静かだった。不意に十歳くらいの少女が盆に湯気を立てたパン入りスープを持ってきた。
「父を待ってる男の子は、あなたね」
穏やかに整った顔立ちに山葡萄色の髪を長く垂らし、仕立ての良い服にエプロンをつけていた。 食べなさいと、盆をテーブルに置き、彼を観察してからさっと消えた。その感じは悪くなかった。
廊下のむこうから「フロリヤお嬢様、私が運びましたのに」とメイドの声がした。スープは久しぶりのご馳走だった。
やっとシェナンディ氏が医者と祈祷師を連れて帰ってきた。
彼は「お二方をマヤルカの部屋へ」と家令に命じていた。
カレナードは父の今度の雇い主と会い、事務室長も加わって事情を説明した。
「ここで仕事を御一緒できなかった事を父も残念に思っているでしょう」と精一杯大人の言葉で話した。
幸いにも、オンブル・シェナンディは冷たい人間でなかった。
彼はよく使い込んだ太い指と自信に満ちた目を持っていた。もともと腕の良い職人であり、今では精密機械組合をまとめるひとかどの人物だ。
「開けていいかな」と断ってから、彼はカレナードのトランクを開けた。
泥にまみれてない中身はヒューゴ・レブラントが常に手入れを怠らなかった仕事道具と井戸や石積み建築物の設計図と地質記録のメモ帳が数十冊あった。
それを手に取り、シェナンディは「惜しいことだ」とつぶやいた。
「しかし、これら貴重な品々を遺してくれた。それから息子だ。これらを領庫に収める代わりに君を出資寮に預け、私が後見人として世話しよう。
これだけの品なら入寮の条件として、午前の学課とうちの仕事の優先権を付けられる。
君が出資寮から逃げ出していなければ、二週間後からは午後はうちで仕事をしてもらう条件も入れよう」
オルシニバレではこうしたやり方で、身寄りのない子供を一人前に育てるシステムを作り上げていた。
カレナードは深く頭を下げた。
親を失った子供が不遇に育つか野垂れ死にをしても不思議でない世の中で、このように生かされることは少なかったのだ。
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