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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」8 玄街の都(みやこ)

アンドラは反駁した。
「大山嶺はアナザーアメリカンの入植者が小さな集落を点在させるのが精いっぱいの厳しい土地だ。ヴィザーツが生誕呪を授けに行くことさえめったにない。付け加えると大山嶺のすぐ西にはサージ・ウォールがそびえている。産業もなしに都市並みの数の人間を生かすわけにはいかんよ」
とたんにエーリフは目から鱗がおちたような声を上げた。
「それだよ、アンドラ。産業があれば、玄街が新しい産業を作りだしていれば、都は出来るぞ。今は人目に触れてないが、丹念に調べていけば珍しい何かがあるはずだ。それが予兆になるものだ」
ヤッカも艦長に触発された。
「数の問題もあります。我々は玄街ヴィザーツのおおよその数さえ掴めていません。決して多くはないでしょうが、そう少なくもないでしょう。
ガーランドがアナザーアメリカを飛ぶために地上には100万人のヴィザーツがいるのです。さらにそのヴィザーツを支えているアナザーアメリカンがいることを考えれば、玄街もそれなりの数がいる。知ると知らずにかかわらず、玄街と接触しているアナザーアメリカンは少なくないはずだ」
トペンプーラが上司に提案した。
「調査員を増やしましょうよぉ。大山嶺の方面も念には念をいれてですね…」
アンドラはやり方を考えると言った。
「こちらが下手に動けば玄街は警戒するだろう。ガーランドはまだ何も気づいてないふりをしてはどうだろう。いかがかね、参謀室長」
「気づいてないふりを出来るのは、次に大きな戦闘が起こるまでだ。それ以上は見過ごせない。私はポルトバスク市の調停開始式を利用させてもらい、一度地上に降りるぞ」
エーリフは、自分も降りたいくらいだが…とまで言って、言葉を切った。
「私はガーランド内部もすでに危ないと感じております」
「艦長。もしや、我々をお疑いですか、いやん、そんなの」
トペンプーラのとぼけぶりは功を成さず、重苦しい何かが彼らの足元をこすった。アンドラの声は苦々しかった。
「根拠は何だね」
エーリフは言った。
「どうもね、我々のコードにはない癖を感じたのだ。このガーランドで」
部屋の物置になっていたマリラがゆっくりと腰を上げた。長身の彼女がさらに長身に見えた。
「…時代が動くか…」
女王の声は低かったが、はっきりしていた。
「浮き船の内部をむやみに疑ってはならぬ。が、秘密裡に乗員の身元を洗え。決して表に出ない方法でな」
彼女の強い眼差しに、トペンプーラは黙ってうなずいた。マリラは自分の椅子を男達の輪に加えた。
「そなたたちが裏切らぬことを私は知っている。
この先、多くの血が流れることになろうとも、地上の町がいくつか地図から消えようとも。エーリフ、先ほどの癖のあるコードの話だが」
その夜、会議は日付が変わるまで終わらなかった。
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