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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」7 どこまでが善人でどこからが悪党か

トペンプーラが補足した。
「人質はたいがい無事に戻っています。ただ、彼らから玄街の情報を得ようにも、奴ら巧妙な手口で痕跡を残さないのですよ」
ヨデラハンが訊いた。
「何だね、奴らもコードを使うためかね」
「違いますよ、参謀室長。アナザーアメリカンの中に玄街と知らず、協力する者がいるためです」
ヤッカの厳しい眉がピクッと動いた。
「どんな連中が玄街に協力しているのだ、トペンプーラ副長」
「ミルタ連合の南部コルドラ地方では愚連隊に人質を預けていました。ブルネスカの首都では隠れ家を提供していたのが地元マフィアの幹部です。彼らは最初は相手が玄街とは気づかずに共犯関係を築いていたようで、あとで正体を知って気味が悪かったと」
エーリフはおもしろがった。
「そうはいっても、暗黒街の人間はまた玄街と手を組むのじゃないかね」
アンドラは反論した。
「エーリフ、君はアナザーアメリカンが玄街を嫌っているのを知っているだろう」
艦長にしてみれば、アンドラの見方は少々甘かった。
「アンドラ。アナザーアメリカンがすべて善人ではない。我々と同じだよ。玄街に引き寄せられるガーランド・ヴィザーツがいるのは確かなのだからね。
玄街は何かやるつもりなのだよ。資金が要ることをやっているのだ。密かに、どこかで、大がかりなことをね」
トペンプーラが白い小指を立てて、唇を突き出した。
「じゃ、奴らをシミュレートしてみませんか。我々は悪党になりきって打倒ガーランドのための計画を練って錬って練りまくりましょうヨ」
男達は、もとより自分達は悪党だといわんばかりにニヤリとした。アンドラはやれやれと肩をすくめた。
「君は道化もできるぞ、ジルー」
参謀室長は言った。
「打倒ガーランドか…喜ばしくないが、向こうは実力行使に出られるだけの組織と拠点と資金を蓄えつつある。それも順調に。
だから小手調べか布石を打ちに来たのかは分からんが、一連の行動に出た。
ガーランドとしては早く拠点を突き止めて叩き潰すのが最善だ。向こうがもっと仕掛けてくる時にはけっこうな勢力になっている可能性は大きい」
エーリフは拠点が必要かな、と問うた。ヤッカは頷いた。
「もちろんです。我々が各領国と緩衝地帯にまで大小のヴィザーツ屋敷を配し地上基地にしているから、ガーランドは悠々と飛んでいられる。
玄街も足元を固めているはずです。いかがです、参謀室長」
ヨデラハンは情報が足りないと言った。艦長は地図をご覧なさいとスクリーンを見た。
「大河の東側の事件は派手だ。各地のヴィザーツ屋敷も警察も自警団も総力を上げる。玄街はかえって活動しにくくなるはずだ。注目を浴びるわけだからね。
その隙に大河の西側のどこか我々の見落としている地域で大きな巣を育てている可能性がある。
まさかとは思うが、ロシュック大山嶺の谷間とか、旧東西トルチフ領国跡とかね」
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