挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

116/388

第4章「春の嵐」5 玄街の足音なき訪れ

トペンプーラは投影機のスイッチを手にして立った。
「まず新年の15日、調停開始直後のカローニャ領国オーサ市のヴィザーツ屋敷襲撃事件です。玄街がガーランド・ヴィザーツに対して白昼攻撃を行った初めての事例であります。
当時、屋敷の庭園ではオーサ産業会議所の役員を招いて園遊会が行われていました。門は午前9時から開きっぱなしで、武装した門衛を2人配置。
事件は午前11時6分に起きました。玄街の活動時間として従来報告されている夜間とは正反対です。6人の玄街はまず、門衛を1人撃ち殺しています。死者6名の中にアナザーアメリカンが4人、負傷者15名の大半もアナザーアメリカンです」
ヤッカが質問した。
「襲撃の目撃者は何と言っている」
「門衛の1人は最初から狙われていたようですが、もう1人の門衛は、玄街は自分の前を素通りしていったと話しています。6人の玄街は横一列に並んで銃を乱射。
そのため死者のほとんどは庭園に入った所にいた者です。門衛が横から回り込んで応戦すると、玄街は即座に撤退。襲撃時間はわずか1分でした」
トペンプーラは別のスクリーンに庭園の見取り図と襲撃直後の写真を何枚か写した。
ヨデラハンが、撤退した玄街の足取りについて訊いた。トペンプーラは肩をすくめた。
「それが全く掴めておりません。一般市民ないし旅行者に紛れたか、隠れ家や活動拠点があると判断し、当地のヴィザーツ警備隊とオーサ市警察隊を増員して捜索しましたが、いまだに不明です。
オーサ市当局は玄街対策を強化するため、ガーランドの持つ玄街情報を欲しがっていますネ」
艦長は顎を撫でた。
「こちらこそもっと情報が欲しいね。玄街の写真はないの。オーサの新聞記者は来ていなかったのか」
「残念ですが、この襲撃で亡くなりました。
では、次に新年の17日、ガーンラド襲撃事件に移ります。
紋章人とシェナンディ嬢の乗船時、玄街によるガーランドへの侵入がありました。玄街が直接ガーランド・ヴィザーツに対して攻撃を行った初めての事例であります。ヤッカ隊長、その後の報告を頼みます」
ヤッカはスクリーンの前に立った。
「死亡した9名の玄街ヴィザーツを徹底的に調べましたが、身元は分かっておりません。4ヶ月になりますが、各領国への照会は返事待ちです。
彼らは全員男性で、身体的に玄街独特の特徴といったものもなく、そこからガーランド・ヴィザーツやアナザーアメリカンと彼らを区別することは不可能です。
衣装も調査しましたが、黒のマント、黒の上着と乗馬ズボンのみが共通の装いで、それらも制服として1ヶ所であつらえた物ではありません」
ヨデラハンは「寄せ集めということか」と唸った。
ヤッカはうなずいた。
「攻撃に使われた奇妙な乗り物ですが、小型の飛行艇をさらに小型に改造したボートのようなものです。
1台だけ半壊したものを調べられましたが、玄街のコードで作られているもようで、破壊されるとすぐ劣化が始まる仕様らしく、こちらの固定コードでなんとか形を保っています。解析には時間がかかりますよ」
ヨデラハンは困ったように禿げ頭を掻いた。
「せめてそのボートの材料の出所が分かればな。どのチームが解析しているのか」
「甲板材料部、ヒロ・マギアのチームです」
ヨデラハンは一旦うなずいてから提案した。
「ヤッカ、もう2チーム増やしてはどうだろう。施療棟と総合施設部に手伝ってもらうのだ。彼らには専門外の解析だが、ここは異分野の視野が必要だ。我々は全く新しい問題に直面しているのだからな。艦長、アンドラ部長、いかがかな」
2人は同意した。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ